【インタビュー】ICU学長・岩切正一郎さん(3)キリスト教ではなく、キリストそのものを信じることで一致していく

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──ICUは、大学名に「キリスト」という名前を含め、学校情報を見れば、キリスト教的な事柄にあふれています。そう考えると、ICUは優れた宣教の場だと思うのですが、学生たちはどういった影響を受けているとお考えですか。

学内住宅に住む教員の中には、宗教学の先生でなくても、聖書を読む会というのを自主的になさっている方もいて、そこに学生たちを招くということが普通に行われています。そこに参加しなくても、「あそこでやっているんだな」と心に残ると思うし、チャペルアワーでは、毎回大盛況というわけではないですが、キリスト教に関係する話を誰かがしていて、いつでも聞くことができます。人生を長い目で見たとき、キリスト教に触れる触れないは大きな問題ではありませんが、4年間でもキリスト教主義の大学で学んだことにより、ものの見方とかがちょっと変わってくるのではないかなと思います。

また、ICU内に限ったことではなく、キリスト教というのは、意外と日本に浸透しています。たとえば、死んだら天国に行くというイメージがみんなの中にあると思うのですが、「天国」という言葉は、戦前ぐらいまでは一般庶民は使っていなかったのではないでしょう。それが今では、誰もが「天国で見守っていてください」とか「天国で誰某さんと会っているのでしょう」とか普通に使っています。キリスト教的な天国ではないかもしれないけれど、そういう世界観が浸透しています。これは、西洋社会との関わりの中で西洋の文化が、日本文化の中に浸透し、知らないうちに自分も触れているのだと思います。

ICU学長・岩切正一郎さん

──岩切学長が洗礼を受けられたのはいつ頃ですか。

大学院生の時に、調布カトリック教会で洗礼を受けました。洗礼を受けて思ったのは、カリタスということで、隣人愛は本当にあるのだということです。

──フランスの詩人・ボードレールを研究されているそうで、ちょっと意外に思いました。

悪魔とかが出でくるからでしょうか。ボードレールの詩は、カトリックの世界観がなければできない詩です。善とか悪の概念とか、神と悪魔の対立とか、人間の純粋性と精神性とか、ああいう二項対立というのは、カトリック的な世界なので、結構面白いんですよ。

──ICUの教職員には、クリスチャン・コードがあると聞きましたが、カトリックの方も多いのでしょうか。

ICUにある国際基督教大学教会(ICU教会)は、さまざまな教派のクリスチャンが共に礼拝を守る超教派(エキュメニカル)の教会となっています。大学の教職員も、カトリック、プロテスタントが共有し、プロテスタントでもさまざまな教団・教派の方がいます。

──エキュメニカルということについてどうお考えでしょうか。

カトリックとプロテスタントが対立することは全くありませんが、「同じだよね」と言うと、「違うよ」と言われるかもしれません。それは、キリスト教の「教」の部分が違うからだと思います。キリストを信じているにしても、その下に人間の組織があって、神父がいたり、牧師がいたり、それぞれの教会があったりというのは、人間がやっている部分なので、人間の中ではいろいろ分かれてしまうのではないでしょうか。ICUは、キリスト「教」ではなく、キリストそのものを信じるというところで一致しているのだと思います。

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