月本昭男著 見えない神を信ずる 月本昭男講演集(朴大信)【本のひろば.com】

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評者: 朴大信

存在の根拠と、生の喜びを、聖書の信仰から紐解く
〈評者〉朴 大信


見えない神を信ずる 月本昭男講演集
月本昭男著
四六判・200頁・定価2420円・日本キリスト教団出版局
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評者は学生時分、著者の月本昭男先生から有形無形の学恩に浴してきた者の一人である。思い出されるのは、しばしば脇道にそれて道草を食うような、余談の数々である。例えば、学生時代にすべき三つのこと(旅、読書、恋愛)。親になったら我が子への愛の手紙をしたためておくことの大切さ。事実と真実との相違に関するご自身の体験談……。どれもが人生を深く見据えるための示唆に富み、何より、師の情に溢れていた。
この度、著者にとって四冊目となる講演集が刊行された。本書の豊かな言葉に触れ続ける中で、あらためて確信した。あの道草は、余談だったのではない。著者の半世紀にも及ぶ旧約聖書学者・古代オリエント学者としての大変緻密で真摯な学問的基盤に裏打ちされた、まさに現代に還元されるべき果実であり、創造的な知恵だったのだと。
本書は、Ⅱ部から成る。第Ⅰ部「旧約聖書に学ぶ」(六講演)では、旧約聖書の特異な世界とその精神史的意義、またその裾野に広がる古代オリエントの考古学的知見や文化史的背景が、鮮やかに描き出される。他方、第Ⅱ部「信仰を語る」(五講演)では、著者自身の内に育まれてきたキリスト教信仰が、あたかも直に触れられるような体温と共に沁み渡っており、平易な語りと相まって、読者を信仰という世界、否、生の現実の奥深さに惹きつけてやまない。
言うまでもなく、この両部は相互浸透的で、縦横無尽に支え合っている。同じ様相は個々の講演においても結実し、聖書の理解と信仰の発露は、共に分かち難く切り結ばれる。
ところで、著者は「あとがき」でこう述べる。「そもそも旧約聖書を残したイスラエルの民は、古代オリエント文明世界の辺境に歴史を刻んだ弱小の一民族にすぎませんでした。……ところが、この弱小の民の間には、目に見えない唯一の神への信仰が育まれました」(一九五~一九六頁)。
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