クリスマス見本市&キリスト教ブックフェア 片柳神父が本屋大賞を受賞

 

2018年クリスマス見本市&キリスト教ブックフェアが2日、大田区産業プラザで開催された。主催は、キリスト教書籍の卸会社(取次)である日本キリスト教書販売株式会社(日キ販)。

プロテスタントやカトリックのキリスト教出版社、絵本出版社、グッズ・メーカーが一堂に会し、それぞれ力の入った商品が見られる機会とあって、大勢の人が会場を訪れた。

何より、12月まで3カ月を切ったこともあって、クリスマス色に彩られた各社ブースでは商品の説明に追われた。この見本市は、教会学校や教会付属の幼稚園・保育園に向けたクリスマス・プレゼント商戦と言っても過言ではない。来年のカレンダーや手帳などもさまざまな種類があり、自宅用やプレゼント用に買い求める人々でごった返した。

片柳弘史さん

同会場ではキリスト教本屋大賞2018の受賞式も行われ、『こころの深呼吸』(教文館)で大賞を受賞した片柳弘史さん(カトリック宇部教会主任司祭)が講演を行った。この本は、片柳さんがツイッターで発信し、5万超のフォロワーに共感された短い言葉を集めたもの。仕事や家庭、人間関係で悩む人へ向けた慰めと励ましの言葉がつづられており、プレゼントにもよく使われているという。

片柳さんは1971年、埼玉県生まれ。94年、慶應義塾大学法学部卒業後、1年間、コルカタ(カルカッタ)でボランティア活動をしているとき、マザー・テレサから神父になるよう勧められ、2008年、上智大学大学院神学研究科修了。

同賞は8回目を迎えた今年から、キリスト教出版販売協会に加盟していない書店も参加できるようになり、29書店、66名の書店員から投票があった。2017年1月から12月までに刊行されたキリスト教書の中から、1次、2次投票を経て大賞を決定した。

また今回、初の試みとして、書店員が選ぶ「本屋大賞」のほかに、フェイスブックを通して読者が選ぶ「いいね大賞」が設けられたが、『こころの深呼吸』が双方ともに1位に輝いた。

受賞者の片柳さんは講演冒頭、このように話を切り出した。

「今朝、宇部教会を出発して、こちらの会場へ向かおうとしていたら、信者たちが何やら大騒ぎをしていました。聞くと、昨日、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑さんはこの教会学校出身というのです。そのため、当時を知っている信者は、ことのほか受賞を大喜びしていました」

片柳さんは神父として教会でミサを行うだけではなく、日々、刑務所の教誨師(きょうかいし)や幼稚園の講師として、また高齢者施設などにも赴き、聖書の話をしている。

「時には、どういうふうに声をかけてよいのか分からない人々に出会う時があります。また、何を話せばこの方に伝わるだろうと思い悩む時もあります。しかし、そんな時でも、心の深いところからふっと言葉が湧き上がってきます。

司祭になるために神学を学んでいた時も、誰もそんな言葉は教えてくれませんでした。しかし、日々、いろいろな人と触れ合っていると、自然と言葉が降りてくるのです。それは、祈りの中で与えられたものとも言えます。

SNSでこのような言葉を発信していると、対面した人でなくても、多くの人が共感してくれているのを感じます。神様が聖霊を遣わし、多くの人に慰めの言葉を与えてくださっているのでしょう。その歩みの歴史と恵みがこの1冊にまとめられています」

片柳さんは2001年に初めて『愛する子どもたちへ──マザー・テレサの遺言』(ドン・ボスコ社)を出して以来、文書伝道の働きを大切にし、数多くの本を手がけてきた。

「福音宣教を考えるとき、イエス様がどのように福音を伝えたかを考えます。どのようにしてイエス様のまわりに多くの人が集まってきたのでしょうか。

イエス様は難しい言葉で人々に語りかけていたでしょうか。決してそうではありません。本当に貧しい人々のところに行って、悲しみと苦しみの中にいる人々に、『あなたたちこそ神様の子どもです。あなたの信仰があなたを救います』と一人ひとりに語りかけました。それが出発点です。

そのような言葉に感銘を受けた人々がイエス様についていったのです。これがキリスト教の始まりでした。私たちのすべきこともこれではないでしょうか」

守田 早生里

守田 早生里

日本ナザレン教団会員。社会問題をキリスト教の観点から取材。フリーライター歴10年。趣味はライフストーリーを聞くこと、食べること、読書、ドライブ。

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