意外と知らない今さら聞けないクリスマス

皆さま寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。寒くなってきたということはキリスト教の一大イベント、クリスマスが近づいてきているということです。クリスチャンでもクリスチャンじゃなくてもみんな大好きなクリスマス。でもクリスマスって、実はどんな日?何を祝う日?何をする日?・・・と「そもそも」を考えると意外と知らないことも多いのではないでしょうか。でも今さら誰かに聞くのもなかなか恥ずかしい・・・

かしこまりました!そんなあなたのために、ここでこっそりひっそりお知らせします、クリスマスの「そもそも情報」!これであなたも今年のクリスマスパーティできっと豆知識王になれる・・・かもしれません。

と、言うわけで今日から2回にわたって、クリスマスの意味や背景について、少し掘り下げてみようと思います。
よろしくお付き合いくださいませ。

・クリスマスってそもそも何の日?

クリスマスって何の日かご存知ですか?と尋ねると、多くの人が「キリストの誕生日」と答えます。そんなの常識でしょ、って思う方もいるかもしれませんが、実はこれ、まちがいです。クリスマスはイエス様の誕生日ではありません。え?じゃぁ何の日なの?はい、クリスマスは正確には「イエス様の誕生を記念する日」です。それって誕生日じゃないの?はい、ちょっと違うんです。

聖書にはイエス様の降誕物語は書いてありますが、その降誕の時期については何も書いていないんです。つまり聖書にはイエス様の誕生日は記されていないんです。と、いうわけでイエス様が生まれた季節については諸説あります。おそらく春か夏に生まれたのではないかというのが有力な説です。なぜなら冬のエルサレムはとても寒いので、暖房もない馬小屋でお産をしたというのはかなり無理があるからです。そんなことをしたら生まれた途端にイエス様は凍死してしまいます。

ではどうして12月25日が特別な日として祝われるようになったのでしょう。それはキリスト教の歴史に関係があります。キリスト教は4世紀にローマ帝国の国教になりました。この頃に「国教なんだから、イエス様の誕生日を祝いたい!」ということになりましたが、「でもイエス様の誕生日、わからないじゃん!」ということにもなりました。さぁ困った。そこで誰かが、「どうせ分からないんだから、ローマの一番大きなお祭りの時に祝うことにしようじゃないか」と提案しました。当時のローマの一番大きなお祭りは12月25日に行われる冬至の祭りでした。この提案が採用されて、それ以来12月25日が「イエス様の誕生を祝う日」になったんです。

ですから今でも教会は公にはクリスマスを「イエス様の誕生日」とは言いません。あくまで「イエス様の誕生を記念する日」です。とはいえクリスチャンでも一般的には「イエス様、誕生日おめでとう!」とか言いますけどね。ですからまぁ一般的には「イエス様の誕生日」で問題はないのですが、一応こんなことも知っておくと、クリスマスパーティで一つトリビアを披露できるかもしれません。

・クリスマスイブって何?

さて、ではクリスマスイブとはなんでしょう。「クリスマスの前日」と思っている方が多いのではないでしょうか。実はこれも誤解です。クリスマスイブは英語にすると「Christmas evening」の略、つまり「クリスマスの夜」という意味です。聖書によると、イエス様は(クリスマスを「誕生日」と仮にするならば)12月24日から12月25日にかけての夜に生まれました。それでこの夜を「聖なる夜」として特別視するようになったんです。

そんなわけで23日を「クリスマスイブイブ」なんて言ったりするのはまちがいです。よく25日を「クリスマス本番」なんて言ったりしますが、本当の「クリスマス本番」は24日の夜ですからこれもまちがいです。25日には「聖なる夜」は終わっているんです。25日の夜にデートをしているカップルが「この聖なる夜を君に捧げるよ」なんてロマンチックムードになっていたら「わ。まちがってやんの」と密かに思っちゃってください。だいたいそもそも!クリスマスはカップルがデートをする日では・・・(以下略)

ですから多くの教会でクリスマスの礼拝やキャンドルサービスなどのイベントは24日の夜に行われます。中にはこの夜に徹夜で祈る方もいます。

お正月も、一番盛り上がるのは12月31日から1月1日にかけての夜ですよね。1月1日の夜はそれほど盛り上がりません。これとちょっと似ているかもしれません。

・アドヴェントって何?

クリスチャンではない方にはあまり親しみのない言葉かもしれませんが、「アドヴェント(アドベント)」と言われる時期が、クリスマス前にあります。これは日本語にすると「待望節」とされ、その名の通り「イエス様の降誕を待ち望む」時期です。・・・というと難しいですが、ぶっちゃけて言えば「クリスマスを楽しみにワクワクする時期」です。この時期は毎年ちゃんと決まっていて、クリスマス直前の日曜日から遡(さかのぼ)って3週前の日曜日からクリスマスまでの期間です。2020年で言えば、11月29日が「アドヴェント第一主日」、12月6日が「アドヴェント第二主日」、12月13日が「アドヴェント第三主日」、12月20日が「アドヴェント第四主日」です(「主日」というのは簡単に言えば日曜日のことです)。

教会でクリスマスの飾り付けは「アドヴェント第一主日」に合わせて行われます。世の中では11月に入ると街がクリスマスモードになりますが、教会ではアドヴェント期間に入るまでクリスマスモードにはなりません。アメリカなどのキリスト教国では街も基本的にはアドヴェントに合わせてクリスマスモードになります。日本の街が11月頭からクリスマスモードになるのはかなりせっかちだということです。おそらく世界で一番早くクリスマスイルミネーションを始めるのが日本なんです。

そして「アドヴェント第四主日」に行われるのが「クリスマス礼拝」や「クリスマスミサ」です。この日曜日に教会に行くと、ごちそうが食べられたりプレゼント交換に参加できたり、きっと何か楽しいことがあります。

このアドヴェントの期間は初心者の方が教会に行ってみるのに最も適した時期かもしれません。実際、教会が一年でもっとも賑わう時期です。クリスマス気分を満喫したいなら是非この時期に一度教会を訪ねてみることをお勧めします。ただ今年は新型コロナウイルスの影響でクリスマスイベントを中止する教会や
受け入れ人数を制限する教会も多いですから事前に電話やメールなどで確認した方が良いかも知れません。

ちなみにこのクリスマス期間が終わるのは、正式には1月6日の顕現日(けんげんび)あるいは公現祭(こうげんさい)と呼ばれる日です。顕現日って何?というのは教派によって多少解釈は違いますが、東方の博士がイエス様に会いに来た日とされます。この日にクリスマスの飾りを片付けるのが正式なやり方です。しかし教会によっては12月25日が過ぎるとすぐに片付けてしまうところもありますし、日本では教会でも年末に大掃除をしたりしますから、その時に片付けてしまうこともあります。もちろん1月6日まで飾ってある教会もあります。

横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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