関東大震災100年でキリスト者が追悼集会 朝鮮人・中国人虐殺 黙認した罪と向き合う

 関東大震災直後、流言蜚語に惑わされた軍隊と官憲、自警団によって無念の死をとげた6000人以上の朝鮮人(700人以上の中国人)をともに追悼しようと、「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺 犠牲者100年キリスト者追悼集会」(同実行員会主催)が9月3日、在日大韓基督教会東京教会(東京都新宿区)で開催された。日本キリスト教協議会(NCC)、在日大韓基督教会を中心に、韓国基督教教会協議会(NCCK)からもゲストを招いて実現した。会堂を埋めた100人以上の参加者は式文に基づいて祈りをささげ、それぞれの母国語で賛美歌を歌った。会の終盤では100年前の出来事を胸に刻みながら、一人ひとりが進み出て〝涙の木〟のモニュメント=写真右=を完成させ、暴力を黙認した罪と向き合い、和解と平和の道を歩む決意を表した。

民族、文化、言語の違い超え共生社会を
内村鑑三 軍や夜警団に〝感謝と敬意〟

主催者を代表してあいさつした光延一郎氏(日本カトリック正義と平和協議会、イエズス会司祭)は、関東大震災にまつわる虐殺問題にいかに向き合うかが、今後の日本社会、キリスト教会にとって「大きなチャレンジ」だとし、「政府官房長官も都知事も、この歴史的事実を無視するふるまいを続けている。公的機関がこうした姿勢を示すことが、日本社会の差別やヘイトクライムを助長している」と危機感を示し、「今、この社会を変えていくべき、いわば『カイロス』に向き合っている。この追悼を機に、国籍や民族、文化や言語を越えて、誰もが自分らしく安心して生きることができる社会、キリストの神の国が、これからの日本と世界に実現するように、祈り、行動しなければならない」と呼び掛けた。

追悼集会は藤原佐和子氏(NCC書記)の司式により開会。吉髙叶氏(NCC議長)が当時の写真を投影しながら、「100年前の出来事」を虐殺に至る経緯からひも解いた。「朝鮮人が井戸に毒を入れた。女性に暴行を働いている」との噂が広がり、翌日の午後に戒厳令が発布され、3日朝には内務省警保局長名から「不逞鮮人が不遇の目的を行おうとしている」との伝令を受け、各地で自警団が組織された。被災地の治安維持と状況掌握のために出動した軍隊を見た民衆が、朝鮮人による暴動を現実のものと思い込んだ。

「ディアスポラの歌」と題してメッセージを語った金鐘洙(キム・ジョンス)氏(NCCK正義平和委員会委員、韓国基督教長老会牧師)は、自身が在日コリアンの人権問題に関心を寄せるようになった崔昌華(チェ・チャンファ)氏、犬養光博氏との出会いとともに、強制連行された朝鮮人労働者の身の上を歌った「身世打鈴」を紹介。ディアスポラの苦難の歴史を知る中で、「死んだ者の権利を考えない社会は、生きている者の人権も保障しない」ことに改めて気づいたとし、和解のために以下の4点を提案した。

「関東大震災の国家責任を認めてほしい」「1923年当時の戒厳令の理由とされたデマはすべて事実でなかったことを日本の教科書に掲載し、教えてほしい」「経済的にコストが削減されるという理由で、福島の毒を海に流すことを中止してほしい」「再び『戦争する国』になろうとせず、アジアの周辺諸国と共存、共生、平和で繁栄する政策をとってほしい」

続けて、日韓の過去と現在について学ぶ「第2回日韓ユース平和フォーラム」(8月29日~9月2日)に参加した青年らによる「宣言文」が読み上げられ、「真実を学ぶ権利を行使し、歴史的証言を継承していく」「現実社会及び、インターネット上でのあらゆる差別と暴力を絶対に許さず、そのような言動があった場合には勇気をもって声を上げる」「内面化されている自身の加害性に向き合い、国籍や性別、バックグラウンドにかかわらず、すべての人の命と尊厳が守られ、誰もが個人として尊重される社会を日常生活の中で実践していく」などの決意を共有した。

実行委員会による追悼集会の「宣言文」は、虐殺を黙認した教会の責任についても言及。「震災翌日の植村正久による説教『神の業の顕れんためなり』では、虐殺に一切触れられず、内村鑑三は、日記に軍や夜警団に対する感謝と敬意を書き綴ってさえいます」「吉野作造の『朝鮮人虐殺事件に就いて』(『中央公論』、1923年11月号)や柏木義円の『上毛教界月報』に掲載の論考には、虐殺の罪と悔い改めを呼びかける言葉が見られますが、その声が広がることはありませんでした」と明記した上で、「社会に遣わされた教会、キリスト者として、記憶の継承に取り組み続けます。現実の黙認という自らの罪を私たちは悔い改めつつ、民族、文化、言語の違いを超えて共に生きる世界を造るために、少数者を排除する社会の在り方と闘い続けます」との姿勢を表明している。

集会の最後にゲストとして登壇した金鍾生(キム・ションセン)氏(NCCK総務)は、「米中葛藤とロシア・ウクライナ戦争の状況の中で再構成されている新冷戦秩序の中で、完全な自主と独立、解放と平和に向けた新たな『民意平和運動』を始めなければならない転換点を迎えた」とし、日韓のエキュメニカル共同体は、「アジアの新しい平和秩序を作ることを先導していかなければならない」「もう一度平和と共生の道を新たに開いていくことを願い、神の思いがこの地で行われるその日まで聖なる祈りの行進を続けていく」と宣言した。

関東大震災100年 朝鮮人虐殺、その時キリスト教会は? 信州夏期宣教講座で星出氏講演 2023年8月1日

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