あれから60年 キング牧師の夢は今も…

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が人種差別と暴力から「ついに自由になる」との夢を宣言してから60年。黒人の命は今もなお、人種差別に基づく暴力によって日々脅かされている。「レリジョン・ニュース・サービス」にブリジット・モイックス氏(Friends Committee on National Legislation、および関連するクエーカー教徒のホスピタリティ・センター、Friends Place on Capitol Hillの事務総長)が寄稿した。

8月26日、ワシントン大行進60周年を記念して、何万人もの人々がワシントンの国立公園ナショナル・モールに集まった。「記念ではなく、継続」と名付けられた行進と、リンカーン記念堂で行われた集会は、キング牧師が描いた、すべての人間の尊厳がいつの日か真に尊重される国としてのアメリカのビジョンにスポットライトを当てようとするものだった。その夢を現実のものとするために、その働きは今なお切実に求められている。

同じ週末、フロリダ州ジャクソンビルで、白人至上主義イデオロギーに突き動かされた人種差別主義者による凄惨な殺人事件が発生した。キング牧師が人種差別と暴力から「ついに自由になる」という夢を宣言してから60年、そしてキング牧師自身が人種差別主義者に射殺されてから約55年が経った今も、黒人の命は人種差別に基づく殺人によって日々脅かされている。

今日の私たちはキング牧師の夢から何を学ぶことができるのだろうか。

キング牧師は、人種差別、軍国主義、経済的不平等がアメリカの過去と現在に深く絡み合い、定着していることを理解していた。彼は公民権と人種正義のための運動を主導しただけでなく、ベトナム戦争に反対し、貧困層のキャンペーンを組織した。彼は非暴力の力で変化を求めて戦った。「今日の私たちの唯一の希望は、革命的なスピリットを取り戻すことだ」と彼は言う。「貧困、人種差別、軍国主義に対する永遠の敵意を宣言し、時に敵対的な世界に出ていくのだ」

クエーカー教徒である私は、信仰によって彼の呼びかけを聞くよう求められている。クエーカーの平和の証は、直接的な殺人や戦争から、ある命を他の命よりも大切にする抑圧のシステムに至るまで、あらゆる形態の暴力を拒否するよう私に求めている。私たちの証は、勇気ある非暴力で暴力に対応し、人間の尊厳と愛で憎しみに対応するよう私に求めている。

行進から60年後、私たちの街路で黒人が虐殺され続け、世界中で戦争が起こり、経済格差が驚異的に広がる中、私たちは軍国主義と人種差別と貧困との関係についてのキング牧師の理解を取り戻す必要がある。

フレンズ国家立法委員会が2021年に発表した報告書の中で、サリフ・ブッカー氏とダイアナ・オルバウム氏は、人種差別と軍国主義が常に深く結びついており、それらがいかに私たちの経済、世界との関わり、そして政治システムを支えているかを説明している。この報告書は、「根強い人種差別と軍国主義、そしてそれらを反映し強化する政治的・経済的構造を解体するには、共に働く新しい方法が必要である」と提言している。

実際、私たちは、人種差別、軍国主義、経済的不公正の構造的現実を元に戻すのに必要な政策変更を推し進めるために、人々を教育し動員する新たな交差(人の社会的、政治的背景や年齢や信仰などによって「他者」を攻撃しない)運動を構築する必要がある。

私たちは今、どのようなステップを踏むことができるのか。この9月、議会は休会から戻るが、私たちの社会における人種差別と暴力への対応に真剣に取り組むべきである。議員たちは、すべての人のための人間の尊厳に向けたこの進行中の行進において、具体的な一歩を踏み出すためには、これ以上待つことはできないということを、私たち全員から聞く必要がある。

その第一歩として、連邦議会は、住宅扶助、医療、乳幼児や新米ママへの栄養補助、地域暴力への介入など、人々や地域社会が癒され、繁栄できるようなプログラムに投資する必要がある。国防総省が必要とせず、要求もせず、欲しくもない艦船や兵器のために、国防総省に際限なく資金が流れるのを止めれば、議員たちはこれらの重要なプログラムの費用を簡単に賄うことができる。

議会はまた、過去最大の子どもの貧困の減少をもたらし、以前に拡大された形で黒人の子どもの貧困を半減させた子ども税額控除を緊急に拡大する必要がある。

最後に、選挙権を保護するための「ジョン・ルイス投票自由法」(John Lewis Freedom to Vote Act)と、アフリカ系アメリカ人のための修復的正義を研究し、提案する委員会を設置する法案であるHR40を可決することが急務である。

私たちの民主主義と世界が今まさに危機に瀕している今、私たちは議会に対し、より公正で平和な世界のために行動するよう主張しなければならない。60年前、キング牧師は「今こそ民主主義の約束を実現する時だ」と言った。その約束を現実のものとするには長い道のりがあるが、私たちは行進を続けることができる。

(翻訳協力=中山信之)

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