原子力行政を問い直す宗教者の会 放射能汚染水の海洋放出に反対

原子力に関する国策を憂慮する宗教者で構成される全国ネットワーク「原子力行政を問い直す宗教者の会」は7月3日、東京電力福島第一原発からの「放射能汚染水(『ALPS処理水』)海洋放出に断固反対します」と題する抗議文書を、岸田文雄首相と西村康稔経済産業相に提出した。

文書では、「ALPS処理水」は処理しきれずに放出されてしまう放射性核種の種類も量も多く、どんなに希釈しても生態系での生体濃縮が進むこと、トリチウムの人体への影響を警告する専門家やそれを裏付ける調査が存在すること、海洋放出以外の大型タンクによる地上での保管やモルタル固化処分についての可能性が検討されていないことなどを指摘。「宗教者として、地球に住むすべてのものの命への畏敬と慈しみから、これを脅かす政府の計画には断固反対いたします」と訴えた。

声明の全文は以下の通り。


内閣総理大臣 岸田文雄様
経済産業大臣 西村康稔様

原子力行政を問い直す宗教者の会
事務局 長田浩昭(真宗大谷派)
岡山 巧(真宗大谷派)
内藤新吾(ルーテル教会)
大河内秀人(浄土宗)

放射能汚染水(「ALPS処理水」)海洋放出に断固反対します

 私たち「原子力行政を問い直す宗教者の会」は、原子力に関する国策を憂慮する各地の宗教者(仏教、キリスト教、神道など)で構成される全国ネットワークです。1993年、「もんじゅ」の初臨界が迫っていたとき、宗教者が敦賀に集まり結成しました。

既に宗教者関係で、私たちの会のメンバーがそれぞれ属している多くの団体からも、表記の件の抗議申し入れがなされていますが、改めて、それら諸宗教と横の繋がりを持つ当会からも抗議申し入れをいたします。簡潔に言って、以下の主な理由によります。

1.政府は処理水と呼びますが、ALPSで処理しても、通常の原発排水とは違い原発事故後の汚染水であり、処理しきれずに放出されてしまう放射性核種の種類も量も多く、どんなに希釈しても許されるという問題ではありません。

2.実際、福島第一原発で汚染水を浄化した後のタンク貯留水に、トリチウムだけでなく、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、他にも半減期が1570万年という長寿命のヨウ素129などの放射性物質が、告示濃度を超えて残留していたことが2018年8月に明らかにされています。それまで東電は、トリチウム以外の放射性核種は基準値以下にまで除去していると説明しており、甘い想定は守られないことが証明されています。

3.また、どんなに希釈しても、生態系での生体濃縮は進んでいきますので、年月をかけてそれらは私たちの生活への脅威となっていくことが避けられません。

4.トリチウムについても政府は影響を否定しますが、トリチウムが人体の中で有機結合型トリチウムに変化することにより、人体にきわめて深刻な内部被曝をもたらすことを警告する専門家の方々もおられます。また、それを裏付ける疫学調査が幾つも存在します。

5.政府は海洋放出以外に道はないと主張しますが、専門家たちから、堅固な大型タンクによる地上での保管やモルタル固化処分についての可能性を示されているにもかかわらず、それらが検討されていません。また、福島第一原発には7~8号機の増設予定だった敷地もあり、タンク貯留の場所はあります。

6.政府のこの度の決定は、地元の漁業に携わる方々に「理解なくしては進めない」と約束していたことに反することです。断じて許されません。全国の漁業関係者一同も同じ怒りを覚えています。私たち国民全体も同じです。

7.政府が処理水放出を強行しようとする背景には、政府が固執する核燃料サイクル事業の六ケ所再処理工場で予定する放射性物質の放出量が、福島のそれを桁違いに超えるという事情があるからではないでしょうか。そうした疑念を私たちは抱いています。

以上、私たちは宗教者として、地球に住むすべてのものの命への畏敬と慈しみから、これを脅かす政府の計画には断固反対いたします。

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