副業はガードマン 古川和男 【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】

週休3日。1日はしっかり「安息日」として、もう2日は副業をしています。道路で赤白の旗を振る警備員です。朝から晩まで危険に見える外仕事で、信者さんたちも「もっと楽な仕事の方が……」と案じていました。夏の猛暑はドキドキで、扇風機つきの「空調服」に、首クーラー、冷凍ペットボトル。お~、こんな熱中症対策グッズがあったのか! と感心しながら夏を越え、冬の寒さも乗り越えて、もうすぐ1年。現場では無線機で「牧師さん、昼めし!」と同僚に言われ、作業員さんに「十字を切る時、縦と横、どっちが先?」と聞かれたことも。「高校まで教会に行っていた」「クリスチャンに会ったの初めてだ」「うちのカミさん、外国人でクリスチャン」なんて声を聞くと、このアルバイトも主が導いてくださったと思ってしまいます。

信者さんが「町中でガードマンを見ると、古川先生を思います」と言ってくれるのも嬉しい。いや、ぼく自身、警備員、土木作業員、労働者の方々を、町中の「景色」としか見ていなかった。この副業を通して、道路脇の人たちが「風景」でなく「人」なんだ、自分と同じ人間なんだ。そう見る目を、ぼくも信者さんたちも主からいただきました。

就職した最初の研修はこんな結びでした。「ガードマンの印象が悪ければ、作業全体の印象が悪くなります。逆に、ガードマンの仕事の好印象が、地域社会全体を明るくすることにもなるのです」。え、そうなのか? 「地域に仕える教会」を目指したいと思っていたら、今この仕事で地域に仕えられる? 単純なぼくはワクワクしたのでした。毎回、祈ります。「今日の作業をお守りください。現場の人間関係も、通行する方々も祝福してください」。その祈りを喜んでいる主が、ウインクしているような一瞬を(毎日ではないけれど)折々に実感しています。

主なる神のユーモアで、派遣される現場が信者さんの家のド近所だったり、偶然またはわざわざ通りかかった信者さんが手を振ってくれたりと励まされます。同僚たちもぶっきらぼうながら優しく、コーヒーやアイスを気前よくおごり、照れる笑顔のニクい先輩ばかり。仕事も、道路工事のやり方、専門用語、関係法令など知らないことばかりで、毎日通っていた道路、壁面も、人の手間と汗と工夫がギッチリ詰まった作品に見えてくる。ここに「小事に忠実な人」(ルカによる福音書16章10節=口語訳)がいる! すげぇ~、すごすぎる、二次産業!

香川のどこかで、ちょっと腰が低く、素人っぽく、制服の似合わないガードマンがいたら、それはぼくかもしれません。地域経済の鈍化、物価の上昇は教会会計にも直結して、牧師を経済的にどう支えるかは大きな課題。副業が最善とは言えないし、体力的・精神的にキツい時もあり、正直、牧師業に専念できれば何よりだとは思います。それでも今、警備員をしているからこその体験や喜びがあるのは確かなこと。牧師が「清貧の人」ではなく、ノンクリスチャンが「救われていない人」ではなく、ガードマンが「景色」ではなく、誰もが「人」であり、人として尊ばれてほしい、と強く願います。

「さて、兄弟たち。私の身に起こったことが、かえって福音の前進に役立ったことを知ってほしいのです」(ピリピ人への手紙1章12節=新改訳2017)

古川和男
こがわ・かずお 1968年秋田県生まれ、北九州市と新潟市で育ち。東京基督教短期大学修了(4年課程)。伊達福音教会(北海道)、東吾野キリスト教会(埼玉)、パース日本語教会(オーストラリア、短期)、鳴門キリスト教会牧師を経て、現在、日本長老教会池戸キリスト教会牧師。趣味は、ジョギング、ジャム作り、橋ウォッチング。共訳書に『ウェストミンスター小教理問答で学ぶ よくわかる教理と信仰生活』(いのちのことば社)など。

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