神道社会における性的マイノリティを考える――神政連LGBT差別冊子配布問題をめぐって 牧田小有玲 【宗教リテラシー向上委員会】

2022年6月13日に東京都内で開かれた「神道政治連盟(以下、神政連)国会議員懇談会」の会合で配布された冊子に、LGBTQら性的マイノリティ当事者に対して差別的な内容の文章があったことが物議を醸した。そこには、「同性愛は先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症」「性的少数者の性的ライフスタイルが正当化されるべきでないのは、家庭と社会を崩壊させる社会問題となるから」などの記載があった。

これは会合の中で行われた大学関係者らによる講演の内容をまとめたものではあるが、それを無批判に作成・配布した神政連、およびその母体となる神社本庁は、人権侵害を是認・助長しているという批判の嵐にさらされ、LGBTQら性的マイノリティ当事者に対する姿勢を問われることになった。同時に、この会合に参加したのが与党である自民党の衆参議員らであったことから、宗教界だけの問題だけでなく日本社会全体に根強く残る性的マイノリティへの差別が浮き彫りとなったとして多くの人々が注目した。

そうした中、11月14日、神政連に加盟する神社で働きながら差別や偏見に苦しんできた性的マイノリティ当事者たちが集う「神道LGBTQ+連絡会」が意見書をまとめ、ツイッターに投稿した。神政連や神社本庁に向けて、差別や偏見を流布してきたことを謝罪し、撤回し、止めるべきだと訴えかけた。とりまとめた神社関係者によるツイッターの書き込みが波紋を呼び、共感する人が現れたことで意見書投稿に至ったという。保守的な社会である神社界で、当事者らがツイッター上で草の根的に組織し声を上げることができるようになったのは、SNSにおいてマイノリティ同士の連帯を可能にする第4波フェミニズムが神社界にも訪れようとしていることを示している。

また今回の件を問題視したのは、LGBTQ当事者たちだけではないようだ。大阪府神道青年会と神政連大阪府本部は11月、多様化する現代社会で実際にどんな思いを持つ人がいるのかを知り、参詣者や氏子崇敬者への接し方を考える一助とすることを目的とする連続講座「SDGsを学び神社での貢献を考える研修会」を開催した。第2講では、性的マイノリティについての啓発活動を行うトランスジェンダー当事者が登壇し、LGBTQについての講義を行った。組織の中でも、徐々にではあるがLGBTQに対する理解への姿勢が垣間見える。

一方で神政連本部は、冊子の配布は停止したものの、新聞社などからの今回の件に関する質問に対し、冊子の内容は「本連盟の見解でない」などとして明確な回答は避けている。

各地域の神社が共同体の中で発展してきた歴史に鑑みれば、神道にとって「家族」がこれまで重要な単位であった側面は否定できない。そうだとして、性的マイノリティ当事者は、本当に「家庭と社会を崩壊させる」存在なのだろうか? さらに言えば、家族の形が多様化する現代社会で、神道的に家族のあり方を再考することは不可能なのだろうか? それについて、十分に議論はなされているだろうか?

この一件は、神社神道に限らず、家族を重視する伝統/新宗教全般に対し、セクシュアリティや家族主義に関する今後の態度を問い直すきっかけになる。教団内部における当事者やその周辺の人々による発言や実践で、宗教社会全体が大きく変わっていく可能性もある。今後の動向に注目したい。

 

牧田小有玲
まきた・こうれ 1994年静岡県生まれ。慶應義塾大学院社会学研究科博士課程在籍中。論文に「神社神道で構築されるジェンダー規範についての一考察 ―女性神職に関する言説分析から」(『宗教学論集』)がある。

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