【となりの異教徒 妻は寺娘】 凸凹夫婦の歩み(5)教会時代~妻とカラーシャツと私 Ministry 2021年夏・第48号

似顔絵=肉村知夏 https://mdrm.world/

ブルルルルーン……。黒装束を風になびかせて1台のスクーターが颯爽と走り去っていく。お寺のお坊さんだ。スクーターというのは「お経参り」の際に非常に便利な乗り物で、各家をまわるとき、駐車場がなかったり、道が狭くて車だと入っていけなかったり、隣同士の家々を順番に訪問しなければならなかったりするので、小回りの利く、駐車場所にも困らないスクーターが重宝されるのだそうだ(足をそろえて座れる◯ィオや◯ョグが人気らしい)。僧衣のままスクーターに乗るのは、訪問先の家でいちいち着替えていられないからなのであるが、そのおかげで日本の社会には、「僧衣姿のお坊さん=スクーター」という〝聖〟と〝俗〟が見事に融合した独特のイメージがしっかりと定着している。正直、羨ましい。羨ましすぎる。さあ、我々キリスト教の聖職者たちもお坊さんたちを真似して、祭服と〝伝道(電動)キックボード〟で街に繰り出そうではないか。

そのためにはまず、「聖職者服」を手に入れなければならない。ガウンやアルバ(アルブ)、スータン(キャソック)などは値が張るものが多いのでなかなか手に入れるのが難しいが、「カラーシャツ」(clergy shirt)なら、『牧師・司祭用カラーシャツ工房HARCA』(https://www.harca-shirts.com/)で比較的安く購入することができる。そう、私の妻・明香のお店である。

明香がカラーシャツを作り始めたのは、2014年。私が1万5千円くらいのシャツを買いたいと妻に相談したところ、「……!? それやったら私が作ったるわ!」と言って、普通のワイシャツの襟を、先輩牧師に貰ったミニカラー(tab collar)に合うように加工して作ってくれたのが始まりである。裁縫技術は独学で身につけたそうだが、その出来の良さは目を見張るものがあり、次第に近隣の教会の先生方からも「自分も作ってほしい」と依頼を受けるようになっていった。

カラーシャツを、キリスト教信者の少ないこの国で入手するのは容易なことではない。だから、『PEANUTS』に登場するライナスのごとく、1着のカラーシャツを長年愛用していらっしゃるベテラン牧師たちも少なくない。それに、女性用のカラーシャツは特に流通していないため、カラーシャツを着ている女性の牧師さんはほとんど見かけない。そんな中で、カジュアルなシャツやブラウス・ワンピース、アロハシャツなど、襟の形状さえ条件に合えばどんなシャツでも〝聖なる〟カラーシャツにリメイクしてしまう明香の縫製スキルとそのアイデアは、日本のキリスト教の祭服界に革命をもたらすものとなった。2016年にネットショップを立ち上げて以来、毎年、日本中の牧師・司祭の方々から注文をいただき、HARCAのシャツは教派を超えて愛用されている。

非キリスト教徒の寺娘が作った「聖職者服」を、多くの牧師さんや神父様が喜んで着てくださっている。なんと素晴らしいことだろうか、と私は思う。今や、大学で働いている私よりも妻のほうが、全国津々浦々の教会とネットワークを形成しているに違いない。正直、羨ましい。羨ましすぎる。HARCAシャツを着て、私もより一層、多くの人たちと出会って交わりを深めていきたいと思う。その前に、“伝道(電動)キックボード”を手に入れなければ。どこで買えるんだ?

……「第2章 教会時代」完ッ!!

柳川 真太朗
 やながわ・しんたろう 1989年、ノンクリスチャンの家庭に生まれる。2007年4月8日受洗。2014年3月、関西学院大学大学院神学研究科前期博士課程修了。同年4月、日本基督教団 名古屋中央教会担任教師。2017年4月より、名古屋学院大学 キリスト教センター 職員(日本基督教団教務教師)。

柳川 明香
 やながわ・はるか 1990年、曹洞宗の寺の長女として生まれる。2013年3月、関西学院大学神学部卒業。結婚後、夫・真太朗と共に名古屋へ。牧師・司祭用カラーシャツ工房『HARCA』経営。

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【Ministry】 特集「来たるべき『神学2.0』への挑戦」 48号(2021年夏)

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