「政治の年は受難の年」となる中国の宗教団体 佐藤千歳 【東アジアのリアル】

宗教活動に対する中国共産党政権の管理体制は、2022年に入っても強化が続いています。4月上旬には、宗教団体の会計管理を規制する「宗教活動場所財務管理弁法(行政法規)」が発表されました。日々の宗教活動で信者から集まる献金やお布施といった寄付や、教会や寺の固定資産の管理について細かく定めています。それぞれの宗教団体が財務報告を当局に毎年届け出る義務も定めています。

日本でも宗教法人法によって、宗教団体は財政関連の書類を都道府県や文部科学大臣へ提出する義務があります。国家による宗教団体の財政の把握という点では、今回の中国政府の規定が特殊なものとはいえません。ただ中国の場合は、この法規に違反すると宗教者が「刑事責任を問われることがある」と明記した点が特徴的です。過去には、共産党の宗教政策を批判した公認教会の牧師が、教会の財産管理についての規定違反を理由に逮捕されています。「宗教団体の財政健全化」という世論に受け入れられやすい法規が、宗教の迫害に利用されることが懸念されます。

振り返ると、中国共産党が創立100年を祝った2021年は、さまざまな分野で党の指導力強化を目指す政策が展開されました。宗教政策も例外ではなく、新たな行政法規が陸続と公布される「規制ラッシュ」の年でした。

まず昨年1月に「宗教教職人員管理弁法」が公布され、聖職者の任命手続きや職務権限について国家宗教事務局に届け出るよう義務付けられました。同弁法により、国家宗教事務局を通じて共産党中央が聖職者の任免を管理する制度が整いました。同時に聖職者が行政や司法、教育に干渉することが禁じられました。

続いて同年5月には、宗教学校への管理を強化する「宗教学校管理弁法」が公布されました。各国のメディアで、教会やモスクに中国国旗を掲げる運動が報道されましたが、この法規では、宗教学校に通う学生と教師の「国家意識を増強するため」、校内での国旗掲揚と国歌斉唱を義務としました。また、ここでも宗教と公教育を分離する原則が示され、「宗教学校は国民教育の体系に属さない」と明記されています。

オンラインの宗教活動については、「インターネット宗教情報サービス管理弁法」が今年3月に施行されています。中国では、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、インターネットを利用した宗教活動が活発になりました。この規則は、こうしたオンラインの宗教活動を政府の管理下に置こうとしたものです。

中国湖北省武漢市のプロテスタントの神学校「中南神学院」で新学期の授業に向け、健康証明などを提出する生徒たち(中国基督教全国両会公式ホームページから)

一連の宗教管理強化の締めくくりとして、昨年12月には5年ぶりの「全国宗教工作会議」が北京で開催されました。習近平国家主席が、「宗教中国化」を徹底し、社会主義と中国の伝統文化にさらに適応するよう宗教界のリーダーと共産党幹部に求めています。

昨年から今年初めにかけて公布された行政法規や政策会議を振り返って言えることは、第一に、聖職者の任免や宗教学校の教育方針といった、宗教組織の根幹をなす事柄について、党・政府が介入する法制度の整備が進んだことです。従来のような不定期の、政治キャンペーンとしての活動摘発ではなく、宗教活動全般に対する網羅的で体系的な管理を進めるという方向性がより明確になっています。第二に、キリスト教であれ仏教であれ、社会の公共的な事柄から宗教を排除する方向性がより鮮明となったことです。中国でも2000年代半ばから、キリスト教会や仏教寺院が教育施設や福祉施設を運営した例がありますが、今後は難しくなるでしょう。

短期的には、5年に1度の共産党大会を秋に控え、中国は政治の季節を迎えています。最高指導部の入れ替えを行う党大会の年は、社会秩序の維持が最優先課題となり、宗教活動や信者に対する圧力が増すことは確実です。日本を含めた国際社会も、中国の教会や信者たちの様子を引き続き注視し続ける必要があると考えます。

 

佐藤 千歳
 さとう・ちとせ 1974年千葉市生まれ。北海商科大学教授。東京大学教養学部地域文化研究学科卒、北海道新聞社勤務を経て2013年から現職。2005年から1年間、交換記者として北京の「人民日報インターネット版」に勤務。10年から3年間、同新聞社北京支局長を務めた。専門は社会学(現代中国宗教研究、メディア研究)。

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