境界線はトラブルの種【聖書からよもやま話551】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。

本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は  旧約聖書、ヨシュア記の16章です。よろしくどうぞ。

ヨシュア記 16章1節

ヨセフ族にくじで当たった地の境界線は、エリコのあたりのヨルダン川からエリコの泉の東側へ、そして荒野の方へ向かい、エリコから上って山地のベテルに至り、

(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

ヨシュア記のこのあたりというのは、聖書の中でも「最も退屈な箇所」の一つかと思います。ひたすら、イスラエル12部族に与えられた土地の境界線についての記述が羅列されています。地図で見せてもらえれば一目瞭然なものを、どうしてわざわざ文章でつらつらと書くんですか神様!・・・なんて愚痴りたくもなります。

しかし、当時の人たちにとって地図ってものすごく貴重なものなんです。そう簡単に書いたり手に入れたりできるものではありませんでした。現代ではスマホのマップアプリを使えば世界中どこでも詳細な地図をすぐに見ることができますが、地図を一般人が身近に使うようになったのは歴史のタイムスパンで考えれば実はかなり最近のことです。

中国の三国時代では、誰かに自分の領地の地図を渡すということは、そのまま「この領地をあなたに差し出します。あなたのものにしてください」という意味になったそうです。そのくらい、地図というのは重要なものでしたし、貴重なものでもあったんです。地図なしには自分の領地を統治することも難しいのですから。しかもそれを書くには膨大な労力と危険が伴います。

そしてもちろん、地図があろうとなかろうと、領地の境界線をきちんと決めておくというのは非常に重要なことです。今も昔も土地の境界線は争いのもとです。国同士の戦争もそうですが、個人レベルだって「隣の家の竹がうちの敷地に生えてきた!」とか、小学生の「この線からこっちは僕の陣地だから入ってくるなよー!」とか、そんな「境界線闘争」は珍しくありません。いつの時代も境界線は争いの種なんです。

これは物理的な境界線に限った話ではありません。たとえば心理的な境界線だって、争いやトラブルの種になるものです。会社の上司が部下の家庭の問題にまで口を突っ込むようなことがあれば、それは「境界線侵害」となって、一種のハラスメントと言えるかもしれません。またたとえば仕事の分担の境界線だって争いやトラブルの種になるものです。大工さんの仕事を左官屋さんが勝手にやってしまったら喧嘩になりますし、税理士の仕事を行政書士がやってしまったり、弁護士の仕事を司法書士がやってしまったりと言った「業際トラブル」は、現代社会で日々起こっています。これも境界線の問題です。

ですから、土地にせよ心にせよ仕事にせよ、きちんと境界線を決めておくことは争いを避ける上で非常に大切です。土地の境界線の話でもめることは多くの人の日常生活においてはあまりないでしょうが「ここまではパブリック、ここからはプライベート」と時間を自分のなかできちんとわけておくだとか、「これは僕がやりますから、ここはあなたがやってください」と仕事の按分をきちんと決めておくだとか、そういうことはとても大切なことです。

境界線はトラブルの種。このことを意識しておくだけで人生のトラブルはいくらか減るかもしれません。

それではまた。

主にありて。

MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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