罪に対して正義を掲げても平和は来ない【聖書からよもやま話521】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。
本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は 旧約聖書、ホセア書の6章です。よろしくどうぞ。

ホセア書 6章1節

さあ、主に立ち返ろう。
主は私たちを引き裂いたが、また、癒し、
私たちを打ったが、包んでくださるからだ。

(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

預言者ホセアにはゴメルという妻がいましたが、このゴメルという人は何度も不倫を繰り返す人でした。しかしそれでもホセアはゴメルを愛し続けました。何度裏切られても愛し続けました。それはホセアが、何度も何度も裏切り続けている人間を、神様はずーっと愛し続けてくれているのだ、ということを知っていたからでした。

ゴメルは不倫の末に身を持ち崩し、ついには奴隷にまでなってしまいました。しかしホセアは彼女を大金で買い戻し「さぁ、主に立ち返ろう」と語りかけたのでした。神様は実はこれとまったく同じことを僕たちにしてくれています。つまり、罪を犯し続けて、ついには罪の奴隷になってしまった人間を、イエス・キリストの十字架によって買い戻し、「さぁ、帰ろう」と言ってくださっているわけです。

さて、たしかにゴメルは困った人ですけれど、夫であるホセアがここまで彼女をゆるしている以上、他の人が「ゴメルはけしからん!謝れ!責任をとれ!」と弾劾し続けるしたら、ちょっとおかしな話ですよね。でも現代日本ではそんなことがそこら中で起こっています。政治家や有名人が不倫をすると、その妻や夫や家族がゆるしたとしても、世がゆるさなかったりしています。自分が何か悪いことをされたわけでもないのに。確かに不倫は良くないことですし、まして「不倫は文化だ」なんて開き直られてしまうと僕もさすがに閉口するのですけれども、不倫をゆるすことができるのは基本的にはその当事者の配偶者や家族、あるいはそれによって被害を被った人たちであって、その人たちがゆるしている以上、他の人たちが「ゆるさない!」と叫んでもあまり意味のないことかと思います。

しかしそれでも「誰かを裁きたい!」というのが人間の性質なのかもしれません。特に現代社会ではSNSやメディアを通して「誰か裁く相手はいないか」と多くの人が目を爛々とさせているようにさえ見えます。「正義」は「罪」の対義語ではありません。「罪」の対義語は「ゆるし」であるはずです。「正義」はむしろ「別の罪」でさえあるのかと思います。罪に対して正義を掲げているうちは、この世の分断は終わらないように思います。もちろん僕たち小さな人間に、あらゆる罪をゆるせと言っても無理があります。僕にだってどうしてもゆるせないことは多々あります。

ホセアは罪を犯したゴメルに対して「不倫は悪だ!」と正義を掲げることはせずに、「さあ帰ろう」と言ったんです。そして神様もまた、罪を犯す僕たちに正義を掲げるよりもまず、ゆるしを与えてくださったんです。すぐには無理でも、全部は無理でも、少しずつでもそんな心に近づけたらと思います。

それではまた。

主にありて。
MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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