「使者を死者にしない」時代を超えた国際ルール【聖書からよもやま話391】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。
本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は旧約聖書、ナホム書の2章です。よろしくどうぞ。

 

ナホム書 2章13節

おまえの戦車を燃やして煙にし、
若い獅子を剣が食い尽くす。
おまえの獲物を地から絶やし、
おまえの使者たちの声はもう聞かれない。
(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

神様がニネヴェの街に対して完全に怒っています。ニネヴェはアッシリアという国の首都であり、彼らはイスラエル人の敵でした。再三にわたって彼らは神様から「イスラエルをいじめるのをやめなさい」と言われていたのに、それを聞かなかったので神様は「もう怒った。君ら滅ぼす!」となったわけです。

この怒りの宣言とも言えることばの中で、特に恐ろしいなと思うのは最後の「使者たちの声はもう聞かれない」という箇所です。これはつまり「今さら謝っても聞かないからな!」という意味です。

古代から国同士の暗黙のルールとして「たとえ戦争中であっても使者だけは殺してはならない」というのがあります。これは洋の東西を問わず、時代の新旧も問わず、どこでも普遍的に適用されるルールです。もちろん歴史を振り返ればこのルールを無視して「敵の死者なんて斬ってしまえ!」と横暴な振る舞いをする権力者もいましたが、それはどんな場合においても正当なこととはされません。それをやってしまった国は大義名分を失います。

使者が殺されるということは、国同士の意思疎通がまったくできなくなるということです。「参りました。降参です。降伏します。」という意思表示さえできなくなるということです。それは即ち、どちらかが滅ぼし尽くされるまで徹底的にやりあうということです。現在のウクライナとロシアの戦争だって、外交ルートはお互いに開いています。外交の使者を捕らえたり殺したりすることはありません。

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Image by Dean Moriarty from Pixabay

聖書のこの箇所で神様は「もう使者が来たって無視するからな!今さら降参なんて言ったってゆるさないからな!もう徹底的に滅ぼし尽くすからな!」と言っているわけです。しかしギリギリのところで、この「国際ルール」は守られています。なぜなら「使者を殺す」とは言っていないからです。「使者の声は聞かれない=使者を無視する」とは言っていますが。この姿勢は「国際ルール」でもOKです。使者の伝える要求を受けるも断るも、それはそれぞれの判断次第ということです。でも「使者を死者にする」ことはしてはいけないんです。

国同士よりずっとスケールは小さくなりますが、僕たち一人一人にとってもこの「国際ルール」は大切なように思います。争っている相手であっても対話の窓口だけは空けておくこと。もちろん相手の要求を必ずしも飲めというわけではありません。断ってもいいし、なんなら無視してもいい。しかし閉ざしてはいけない。そのあたりのラインを守ることは最低限必要なのかと思います。これまたいつものように例によって、自戒をこめて思います。

それではまた。

主にありて。
MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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