災害への備えを通して 梅崎須磨子 【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】

宇和島中町教会に赴任したのは2022年4月のことです。転任の打診にどこへでもと返事をしたものの、四国のことも宇和島のこともまったくと言っていいほど何も知りませんでした。ただ頭をよぎるのは、南海トラフ巨大地震が起こったら大きな被害を受けそうな地域だ……ということだけ。小さな子どもを抱えて耐えられるだろうかと不安を覚えました。しかしながら、そんな心配は夫の「起こることが分かってるんだから、備えられるじゃん」という何とも楽観的かつシンプルなひと言に吹き飛ばされ、私の心の内にはむしろ希望の光が大きくなっていきました。「これは、教会と地域が共に考えられるトピックだ!」と。

教会にはさまざまな課題がありますが、その多くは教会間では共有できても地域とはしがたいものです。しかし、災害への恐怖や不安、どのような備えができるかという課題は間違いなく共通の課題です。私は、前任地では教会のある地域に暮らしていませんでした。教会のそばに牧師館がないということは教師にとっては時に気持ちの面で楽ではあるのですが、地域の様子を知ることや、そこで暮らす人々の輪の中に入っていくことが難しいといったデメリットもあります。その土地の人になれないもどかしさがつきまとうのです。災害は恐ろしいけれど、その地域に建てられた教会に仕える1人として周囲の人々と思いや悩みを分かち合い、共に考えられるとすれば、そして教会を身近に感じてもらえるのだとすれば(いや、もっと率直に言えば怪しい者ではないということを分かってもらえるのだとすれば)、こんなに嬉しいことはないと思ったのです。

宇和島に住んでみると避難訓練はひんぱんに行われており、やはり防災の意識が高いことを感じます。残念ながら、地域の避難訓練は日曜日の午前中に行われるので参加できたことはありませんが、自治会の集まりで「教会、そして附属幼稚園でできることがあれば!」と言うと、一緒に考えてくださいます。教会でも今年度新たに防災委員会が発足し、備えについての協議や地震を想定した定期的な避難訓練が行われるようになりました。地震が起こった時に地域の方々もここに避難されるかも、と考えながら準備をしています。

つい先日、附属幼稚園の園庭には新たに購入した防災倉庫が設置されました。幼稚園の備蓄品や教会の防災委員会で購入した雨具などなど、これからもたくさんの物が収められていくことでしょう。防災倉庫のない地域なので、この倉庫が地域のためにも役に立つかもしれません。自治会長にもこの件をお伝えしているところです。教会の持つ目に見える物々が地域と共有されて命を支えることを通して、目に見えないけれど確かに私たちを生かすものも共有されますようにと願っています。

あと数日で、東日本大震災から14年を数えようとしています。原発事故はいまだに被害を与え続けていますが、それでも各地で原発が稼働し続けていること、そして地震、豪雨、大雪と被災が重なる能登の地に、復興を推し進める力が注がれていないことに歯がゆさを覚えます。四国で巨大地震が起こる時、津波が襲う時、この地は見捨てられてしまわないかと案じずにはいられません。私たちがなそうとしている備えが、「できることは自分で」と国が民を放り出すことを後押しするようなことになりませんように。

うめさき・すまこ
1991年福岡県生まれ。2004年日本基督教団犀川教会(福岡県)にて受洗。2016年関西学院大学大学院神学研究科前期課程修了。甲山教会(広島県)主任担任教師を経て、2022年より宇和島中町教会(愛媛県)主任担任教師、附属鶴城幼稚園理事長・園長。

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