Q.牧師に求められるリーダーシップとはどのようなものですか? 独裁的にならないか不安です。(30代・牧師)
◆み言葉で勝負する
牧師の武器は学歴でも人脈でも政治力でも親しみやすさでもない。聖書の言葉の説き明かし、これにつきます。この場合の勝負とはみ言葉を用いて聴衆に心理的圧力を与え、牧師の言動を正当化することではありません。プロとしてみ言葉をあらゆる世代の人に分かりやすく伝えることです。ここで迷いが生じると牧師はそれ以外で埋め合わせを始めます。必要以上に信徒に合わせ、媚びてしまいかねません。
◆信徒と「友達」にならない
結果として友達になれば素晴らしいことです。しかしあなたは友達をつくるために教会に遣わされたのではありません。また教会はあなたの孤独を癒すための道具でもありません。人々は無意識に教会を自分にとって居心地の良い空間にしようとします。もし教会が快適な空間を成立させるための場なら、牧師など不要です。集まった人々の投票で民主的に物事を決めれば良いのです。しかし教会は「神の家」。人間ではなく神が喜ばれる空間を形作らなければならない。だからこそ神学的訓練を受けた牧師が派遣されます。どの教会に遣わされても牧師は常に新入りで孤独。故に神学的根拠に立って戦うよりは、人間的な親しみの中で和気あいあいと温もりたいとの誘惑にさらされます。でも見ている人は見ています。
◆去る時のことを忘れない
独裁者は引退を考えません。もしくは引退した後、自分の息のかかった後継者を指名します。そして延々と自らの影響力を陰に陽に誇示します。そこから自由になるためにも、どのような後継者が来るか、その決定は教会総会にゆだねるべきです。またそのような判断ができるような教会総会、委員会、役員会を根気強くリードして育てていくことがあなたの責務です。
◆真のリーダーはイエスである
努力しつつも、神さまに下駄を預けます。あれこれ思い悩むぐらいなら、賛美歌を歌い、牧師館を離れ、ビール片手に釣りでもしましょう。
しおたに・なおや 青山学院大学宗教部長、法学部教授。国際基督教大学教養学部卒業、東京神学大学大学院修士課程修了。大学で教鞭をとる傍ら、社会的な活動として、満期釈放を迎える受刑者への社会生活を送るための教育指導をはじめ、府中刑務所の教誨師として月1度ほど、受刑者への面談や講話を行う経験を持つ。著書に『忘れ物のぬくもり――聖書に学ぶ日々』(女子パウロ会)、青山学院大学の人気授業「キリスト教概論・Q&A」が書籍化された『なんか気分が晴れる言葉をください――聖書が教えてくれる50の生きる知恵』(保育社)など多数。