再びアメリカでチャプレンを目指して 【関野和寛のチャプレン奮闘記】第16回

アメリカから日本に戻ってから約1年が過ぎた。大阪と神奈川の病院、しかもキリスト教とはまったく関係のない施設が私のためにチャプレンのポジションを用意してくれた。そこで働くことは日本の医療界にとってのスピリチュアルケアの地平線を広げるために、本当に意義深いことであった。毎週1500kmを超える移動は身体にこたえたが、クリスチャンではない医療従事者、そして患者さんと出会える日々は本当に豊かであった。また、その傍らで私はさまざまな場所で講演を行う機会があった。しかし、気づいたことがあった。それは、私はいつも同じ話を繰り返していたのだ。それは、アメリカでコロナパンデミックの中、毎日コロナ病棟に入って命がけで人々の看取りをしていたことや、日本ではまだ普及していない病院でのチャプレンの働きの基本についての内容で、それをいつも繰り返しているのだ。

もちろん、その1年間は私の人生の中で最も濃密な期間であったと思う。しかし、いつまでも同じ過去の話をしている人間、特に同じことを講演で話す牧師には絶対になりたくない。そんなことを悩んでいると、自分の魂の奥底から叫びが聞こえてきた。「私は挑戦したい。海外で、自分がまだまだ知らない世界で全力で挑戦を続けたい!」

葛藤の中で、オンラインでのチャプレンの継続教育を受けることに決めた。アメリカの聖職者は基本的に400時間の1ユニットのチャプレン研修を病院などで受けながら、スーパーバイザーから指導を受ける。そのコースがオンラインでも開講されていることを知り、シカゴに事務所を構える「ルーサランパートナーズ」というチャプレン育成センターに参加することにした。イギリスやアフリカ、中東などさまざまな国の聖職者たちが、自国でチャプレンとして活動し、それをオンライン上で報告し、スーパーバイザーから指導を受けるという形である。

費用は非常に高額であった。週に1度の研修会だが、時差のために私は朝3時に起きなければならなかった。それでも、日本にいながら世界の仲間とともに、世界水準のチャプレンの教育を受けたいと強く思っていた。そのため、大阪や秦野の病院に通いながら、千葉県津田沼の教会で牧師を務め、毎週パソコンの画面に向かって英語を使い、再び世界とつながろうとしていた。

だが、パソコンの前に座って英語で世界の仲間と切磋琢磨していても、成長の限界を感じていた。パソコンの前にいればいるほどに、魂が叫ぶ。「もう一度アメリカに行って、世界の最前線で最高水準のトレーニングを受けながらチャプレンの道を深めたい!」――だが、自分の理性がそれを抑えようとする。「夢ばかり見ているわけにはいかない。40歳を超え、自分のキャリアの後半に差し掛かり、自分のライフワークをまとめていく時期だ。夢を見るのではなく現実を受け入れ、少々ほろ苦い挫折を噛みしめながらも、やりたい仕事ができていることに感謝し、残りの人生を生きていかなければならないだろう!」

そんなある日、大阪の老人施設で患者さんのケアを終えた時、壁に書かれたメッセージボードが目に飛び込んできた。「人は年齢で老いるのではない。人は夢を見なくなった時に初めて老いる」と、力強い墨文字で書かれていた。私は夢を見ることをやめようとしていた。もっと言えば、夢を追い求めることが贅沢であり、罪であるかのように感じていた。しかし、限りある人生の中で、もし願い求める夢があるのなら、たとえ失敗したとしても、その夢に向かって何歳であろうとも再び走り出していいのではないか。

そのような小さな炎が胸の中で燃え上がったある日、私は週に1回のオンラインチャプレン・トレーニングコースに出席していた。その日のトレーニングの終わりに、スーパーバイザーと1対1の面談があった。実際に一度も直接会ったことのないチャプレンの指導者が、パソコンの画面越しに私の目を見てこう言った。「あなたはもう一度アメリカに行って、チャプレンの道を深めたいと思っているのではないですか?」その言葉に心を揺さぶられた私は、即座に答えた。「はい、そうです。もう一度挑戦したいです……」。すると、スーパーバイザーはこう言った。「それなら、思い切り進んでください。チャプレンの道は広くはありません。待っていても誰もドアを開けてはくれません。自分の道を進みたいのであれば、何度でもドアを叩かなければなりません」

その言葉は、私の生き方そのものであった。前例がなくても、目の前の壁が高くそびえていても、何度でも挑戦し続け、壊れるまでドアを叩き続ける、いつだってそうやって生きてきたのだ。年齢や環境、誰かのせいにする選択肢は私にはない。私はもう一度アメリカに行き、チャプレンの道を進んでいくことを決意したのである。

*個人情報保護のためエピソードはすべて再構成されています。 

UnsplashChris Montgomeryが撮影した写真

痛み(Pain)vs 患難(Suffering) 【関野和寛のチャプレン奮闘記】第15回 

関野和寛 アメリカミネソタ州 ジャパニーズフェローシップ教会牧師/病院チャプレン 毎週メッセージ配信中https://youtube.com/@JapaneseFellowshipChurchMinnes?si=sugazGgni9Ip9iKt

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