コロナ禍で急増する「産後うつ」。辛いと感じたらすぐに助けを求めて

新型コロナウイルスの感染拡大は、メンタルヘルスにも大きな影響を及ぼしている。出産した母親の10人に1人が発症するとされる「産後うつ」は、コロナ禍においては倍増しているともいわれている。
一方で、目の前の子育てで精いっぱいになっている母親は、自身の辛さや不調を自覚していないことも多く、無意識の内に自分自身を追い詰めてしまう傾向があるという。今回は、出張専門で子育て相談などに応じている「しふら助産院」の助産師・島野栄子さんに「産後うつ」について話をうかがった。

photo by Iuliia Bondarenko

――コロナ以降、子育て相談の内容に変化はありましたか?

はい。なんといってもコロナ禍でママたちの産後の環境が大きく変わりました。
里帰り期間が長くなった人や、逆に里帰りできない人、実母の支援がない人、パートナーが在宅ワークで常に家にいるなど、置かれている状況はそれぞれですが、今までにない育児の不安を抱える人が増加しています。

特にパートナーが在宅ワークをしている場合、ミーティングなどがあって常に静かにしていなければならず、ママは赤ちゃんを泣かせないように神経を使っています。「泣かせないようにするのはどうしたらいいの?」「泣かせるのを減らすには?」といった質問に加えて、泣かせないために1日中だっこをしているのでごはんも食べられない、トイレさえも我慢しているから膀胱炎になってしまったという声もありました。また、実母がお手伝いに来てくれると任せっきりで、パートナーが子育てに参加してくれないという相談も増えています。

一方で、パートナーが今までと同じように出勤していて、実母などの支援がない場合は、初めからワンオペ育児になります。実は、このパターンが最も「産後うつ」を発症しやすいケースです。
特に初産の方は、慣れない育児で誰に相談したらいいかもわかりません。コロナ前は、妊娠中は産院で両親学級などのクラスを受けたり、入院中は同時期に出産したママたちと友だちになったりと、コミュニケーションを取る場所がありました。しかし、このコロナ禍では、妊娠中のクラスや産院で友だちを作ることはおろか、家族さえ面会禁止、授乳室が使えないなど孤立した状態になっています。

――緊急事態宣言下では、多くの地域で児童館など子育て支援施設も閉鎖されていましたね。

友だちがいない、外に出ていない、話し相手がいないと孤独感を感じているママはとても多いですね。また、友だちができても少数なので、ほかの赤ちゃんと生育状態を比べて、実際には順調に育っているにもかかわらず、「うちの子は成長が遅いのでは」と悩む人も。
こうした孤独からストレスや不安が広がり、イライラが募り、情緒不安定になり……ついにはストレスがDVという形で表れてしまったり、「産後うつ」を発症する人が増えているのだと思います。

――パートナーや身近な親族、友人の方に向けて、「こんな状態になったら注意してあげて」というポイントはありますか?

例えば、「眠れない」との訴えがあったときは、育児は眠れないのが当たり前だと思わないで、授乳やおむつ交換、寝かせつけなど少しでも協力をして、なるべく疲れが取れるようにしてあげてください。
「産後うつ」の兆候は、「育児に疲れた」と具体的に辛そうな言葉が出ることだけでなく、笑顔がなくなる、涙もろくなる、無口になる、逆に暴言を吐く、感情の起伏が激しくなる、食欲がなくなるなど、さまざまな面で見られます。
少しでも普段と違うな、様子がおかしいなと感じたら、まずは周囲の人は話を聞いて、辛い気持ちを受け止めてください。そしてどんな手助けが必要か一緒に考え、手が足りないときは行政の相談窓口など外部のサービスもぜひ利用してください。

――子育てにまつわる相談できる人がいない……というママに向けて、どのようなサービスがあるか教えてください。

私も「東京都助産師会オンライン相談」相談員として無料オンライン相談を受け付けていますが、各地域で産後ケアやファミリーサポート、子育て相談を受け付けています。また、保健相談所や保健センターでも子育て支援プログラムを展開していますので、辛いと感じたときはぜひ助けを求めてください。

――産後だけでなく、やんちゃ盛りに反抗期……と子育ては常に何かしら予想がつかない出来事でいっぱいです。不安を抱えているママたちに対して、どんなことを伝えていますか?

まずはママたちの不安を聞いて、相談できる窓口があること、いつでも相談していいこと、どんなことでも聞いてもいいし、どんなことを言ってもいいんだよと伝えています。
心がけているのは、お母さんがとらえているマイナス部分が、実はプラスになるということをお伝えすること。やんちゃをして困っているお母さんには、好奇心が旺盛で、運動能力が発達していることなど、良い面もあることや、そのときに応じた対応の仕方を伝えています。
なかにはお子さんに手を上げてしまう親御さんもいますが、そこまでの経過には理由があったはずで、その経過が辛かったですね、と伝え、私たちが改善に向けてどんなお手伝いができるかを話します。
どんな状況にあるお母さんにも、一人で頑張らないで、「助けて」と言ってもいいんだよということを伝えていきたいです。

◇子育て中のお母さんへ◇

新型コロナウイルスの影響で、子育てを取り巻く環境が大きく変化しました。赤ちゃんはかわいいけれど、常に一緒に過ごしているママは、24時間365日お休みなし。少しでも苦しい、辛いと感じたら、遠慮なく助けを求めてください。「お住まいの地域名+子育て支援」などのキーワードで検索すると各地域で受けられる公的支援が調べられるほか、メンタルクリニックへの受診も検討してみてください。

◇お話を聞いた人


しふら助産院 島野栄子(しまの・えいこ)さん

病院助産師を経て2013年、出張専門「しふら助産院」を開業。しふらとは旧約聖書の出エジプト記に登場する助産師の名前に由来。練馬区を拠点に妊娠中・産後の子育て相談に応じるほか、若い世代に命と性の尊さを伝えるべく、助産師会の性教育に携わり、中高生に向けて講演等の活動も行っている。キングダムシーカーズ教会所属。
公式サイト:https://shiphrah.jp/

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