ポストコロナ期も続く中国教会のオンライン活動 佐藤千歳 【この世界の片隅から】

中国政府が「ゼロコロナ」政策を解除して1年半余りが過ぎた。多くのプロテスタント教会は対面礼拝に戻ったが、オンライン礼拝や牧会を続ける教会も一部にあり、幅広い層の信者から支持を得ている。

中国のプロテスタント教会がオンライン礼拝を始めたのは、筆者が確認した範囲では2010年代初めだった。日本のキリスト教放送局FEBCよりは遅いが、コロナ禍のかなり前にオンライン化に着手していた。政府の宗教管理政策により、中国のプロテスタント教会は政府公認と非公認に分かれる。オンライン化の契機は、2009年に起きた著名な非公認教会の取り締まりだったという。「同じことが自分たちの教会で起きたらどうしよう」という危機感から、一部の非公認教会が日曜礼拝のオンライン中継を始めた。

その後、習近平政権が宗教活動に対する規制を強化する改訂宗教事務条例を2018年に施行し、翌2019年にかけて中国全土で網羅的な非公認教会の取締りが行われた。これにより教会活動のオンライン化が加速し、同年末のコロナ禍で全面オンライン化に至った。

コロナ禍の収束後も、宗教活動に対する規制が収束する気配はなく、オンラインで新たな活動形態を模索する教会もある。

例えば、中国沿海部の都市に拠点を置くある教会は、日曜礼拝の他に平日の祈祷会や信者の交わりもオンライン化し、他教会の参加者も幅広く受け入れてきた。オンラインの教会活動は、参加者間の交流の乏しさが課題である。この教会では、礼拝は多数が参加できる会議アプリ、信者の交わりは少人数のグループ形成に向いたSNSなど、複数のオンラインツールを使い分けて対応している。礼拝の参加者は1千人を越えることもあるが、交わりは10人以下のグループに分かれるという。

中国の教会、特にプロテスタントの非公認教会は、一つの教会の規模が小さく教派の数は多い。信者の横のつながりの乏しさが、長年の懸案だった。これに対し、上記の教会が設定したオンライン空間は多様な信者を受け入れており、分断をつなぐプラットフォームの役割も見られる。

中国でも現在は、オンラインを残しつつ活動の中心を対面に戻す教会が多数派だが、上記のようなオンライン・リテラシーが高い教会による活動は、今後も発展すると筆者は予測する。第一に、共産党政権による宗教統制が続く限り、統制を回避しながら信仰をつなぐ手段としてオンラインは有効であり、「その日」に備えてどの教会も、オンライン活動のノウハウを磨き続ける必要があるためである。

第二に、時間と空間の制約を受けないオンライン独自の強みが、上記のような活動に発揮されているためである。対面の教会に行けない高齢者や過疎地の住民、育児中の母親、長時間労働者が、毎日の聖書講読会に参加して信者同士の交わりを深めている。オンライン礼拝や祈祷会には中国各地から参加者が集まり、録画の再生回数も多い。

「コロナを振り返ると、神が私たちに用意されたのだということをより強く感じる。神の道は私たちの道より高く、神の意思は私たちの意思よりも高い。神は私たちのために、私たちの想像を越えたものを用意されていた」――プロテスタント教会のある牧師は、中国で出版した手記にこのように書いた。中国教会が宗教取締りへの緊急避難策として取り入れたオンライン礼拝は、課題を抱えながらも、新たな教会のあり方として信者たちによる模索が続くだろう。

佐藤 千歳
 さとう・ちとせ 1974年千葉市生まれ。北海商科大学教授。東京大学教養学部地域文化研究学科卒、北海道新聞社勤務を経て2013年から現職。2005年から1年間、交換記者として北京の「人民日報インターネット版」に勤務。10年から3年間、同新聞社北京支局長を務めた。専門は社会学(現代中国宗教研究、メディア研究)。

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