教皇フランシスコ、長崎ミサと広島でのメッセージ 「声を発しても耳を貸してもらえない人々の声になりたい」

 

日本滞在2日目となる教皇フランシスコは24日午後2時、長崎県営野球場「ビッグNスタジアム」でミサを執り行い、およそ3万人が参加した。

(POPE IN JAPAN 2019【公式】のライブ配信動画より)

まず、教皇は特別車「パパ・モービル」で会場を一巡し、会場の人々に笑顔で祝福を与えた。

この日、カトリックの典礼暦では、1年間のサイクルの最後となる「王であるキリスト」の祭日であり、全世界共通である聖書箇所(ルカ23:35~43)が読まれた。

イエスと共に十字架につけられた犯罪人の言葉、「イエスよ、あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください」(同42節)について、教皇は次のように説教で語った。

「罪なき者(イエス)の死に対して無関心で自己正当化する者の悪口とつぶやきが響く中で、この犯罪人の言葉は、全人類にとっての希望の一語に変わりました。私たちは、悔い改めた犯罪人と同じように、主イエスを弁護し、仕えるために、声を上げ、信仰を表明したい。十字架では多くの声が沈黙させられました。ほかの大勢の人々は嘲笑しましたが、犯罪人の声だけがそれに逆らい、苦しむ罪なき方を擁護できたのです。それは勇気ある信仰宣言でした。沈黙か、嘲笑か、あるいは告げ知らせるか。私たち一人ひとりが決断することです」

その後、教皇は午後5時半、長崎から広島空港に到着した。そして午後6時48分、平和記念公園(広島市中区)を訪れ、「平和のための集い」に臨んだ。会場には、被爆者や諸宗教代表者をはじめ、およそ2000人が参列した。教皇が広島を訪れるのは、1981年以来38年ぶり。

教皇は高齢の被爆者一人ひとりと手をとって言葉を交わした。その後、原爆死没者慰霊碑の前に献花し、長い祈りをささげた後、ろうそくに火を灯し、鐘の音が響く中で参加者と共に黙祷をささげた。

被爆者の証言と代読に続き、教皇は平和メッセージを述べた。

「私は平和の巡礼者として、この場所を訪れなければならないと感じていました。激しい暴力の犠牲となった罪のない人々を思い出し、現代社会の人々の願いと望みを胸にしつつ、静かに祈るためです。私はへりくだり、声を発しても耳を貸してもらえない人々の声になりたいと思います。平和の君である主よ、来てください。私たちをあなたの平和の道具、あなたの平和を響かせるものとしてください」

また、そこでは次のようなメッセージも記帳した。

「私は平和の巡礼者として、この地の歴史にあるあの悲惨な⽇に傷と死を被ったすべての⼈との連帯をもって悼むために来ました。いのちの神が(私たちの)⼼を、平和と和解と兄弟愛へと変えてくださるよう祈ります」

東京から長崎、広島へと、長い1日を終え、教皇はその後、空路で再び東京へと戻った。

雑賀 信行

雑賀 信行

カトリック八王子教会(東京都八王子市)会員。日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)で受洗。1965年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。90年代、いのちのことば社で「いのちのことば」「百万人の福音」の編集責任者を務め、新教出版社を経て、雜賀編集工房として独立。

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