教皇フランシスコは26日、4日間におよぶ日本滞在を終え、帰国の途に着いた。出発前には、自らの出身母体であるイエズス会が設立した上智大学を訪問し、学生を前にメッセージを語った。
教皇が上智大学に来校するのは、1981年のヨハネ・パウロ2世以来2度目。2年前の12月には、同大とバチカンとをオンライン映像で結び、学生たちと教皇が対話する「教皇フランシスコと話そう」が行われた。そういうことから、「上智のキャンパスで直接、学生たちに会いたい」という教皇からの希望により今回の来校が実現したという。
会場参加者によって「あなたの平和の」(詞がアッシジのフランシスコの「平和を求める祈り」)が静かに歌われる中、教皇が入場すると、会場は大きな拍手に包まれた。その後、「『叡智(えいち)の座の大学』で学ぶ者へ」と題したメッセージを教皇が学生に向かって語りかけた。
冒頭、「帰国前の少しの時間を皆さんと共に過ごせることをたいへんうれしく思っています。日本での滞在は、とても密度の濃い4日間でした」とあいさつした。そして、メッセージの中で教皇は次のように語った。
「若者たちが単に準備された教育の受け手となるだけでなく、彼ら自身もその教育の一翼を担い、自分たちのアイデアを提供し、未来のための展望や希望を分かち合えることを願っています。
上智大学は、社会的にも文化的にも異なるものをつなぎ合わせる場として常に開かれているべきです。格差や隔たりを減らすことに寄与する教育スタイルを推進するものとなるよう願っています。
隅に追いやられた人々が大学のカリキュラムに創造的に巻き込まれ、組み入れられていくことが大切です。大学での良質な勉学が、ごく少数の人の特権と見なされるのではなく、公正と共通善に奉仕するものであるという自覚を伴うべきであり、それは各自に与えられた分野における奉仕なのです」
続けて、「わたしたちが貧しい人たちのことを忘れないようにとのことでしたが、これは、ちょうどわたしも心がけてきた点です」(ガラテヤ2:10)という聖句を引用し、「このパウロの明確な助言を忘れてはいけません」と力を込めた。
「神の叡智(上智大学は英語でSophia Universityで、「ソフィア」は「神の叡智」という意味)を求め、見いだし、広め、今日の社会に喜びと希望をもたらす使命に、上智大学の学生が加わるよう、主なる神とその教会は期待しています」
最後に、今回の訪日において心のこもったあたたかい歓迎に対する感謝の言葉を述べ、「これからも私の祈りの中で常に皆さんのことを思い出します。私の心の中に常に皆さんがいます」と締めくくった。
教皇のスピーチ後、同大学長の曄道佳明(てるみち・よしあき)さんとカトリック学生の会会長で同大神学部3年の鈴木隆典(すずき・りゅうや)さんが記念品を贈呈した。
上智聖歌隊が歌う「教皇のための祈り」とともに教皇の退出となったが、しばらく壇上から会場に下りて学生らと交わりの時を持った。会場外では大勢の人が出迎える中、神学部の学生らがメッセージを寄せ書きした大きな旗を進呈し、それを満面の笑顔で受け取る場面もあった。その後、出迎えの人たちに手を振りながら同大を後にした。
教皇を見送った後、記者会見が行われた。教皇は、「当初予定になかった広島を訪問でき、本当によかった」と感想を述べていたと言い、広島で行われたイベントの良い意味での重さに感動していたことを伝えた。さらに、「東京ドームでは、日本人があんなに盛り上がるとは思わなかった」とびっくりしていたことも明かされた。