東北電力が10月29日に女川原子力発電所2号機を再稼働したことに対し、日本カトリック正義と平和協議会平和のための脱核部会(光延一郎部会長)は11月1日、石破茂首相と東北電力の樋口康二郎社長に宛てて抗議声明を発出した。
声明は、「東北地方で再び大地震、津波が起きないと断言することも、もし大地震、津波が起きても女川原発は大丈夫だと断言することも、不可能」だと述べ、事故が起きた場合の避難が困難を極めるだけでなく、仮に避難できても地域は汚染され、地域コミュニティーが破壊されてしまうことは、13年前の福島第一原発事故によって明らかだと強調。福島第一原発事故の教訓を無視することは、住民が被った甚大な被害の経験をないものとすることであり、原発の抱える問題を無視することは、そこで生きる人々のいのちと人権を甚だしく侵害することだと訴えた。
声明の全文は以下の通り。
内閣総理大臣 石破 茂 様
東北電力株式会社代表取締役社長 樋口康二郎様
東北電力女川原子力発電所2号機の再稼働に抗議いたします
東京電力福島第一原子力発電所で事故を発生させた東日本大震災から13年経った2024年10月29日、東北電力は、福島第一原発から直線距離でわずか100kmに位置する女川原子力発電所2号機を、再稼働しました。あの時以来、東日本での原発稼働、および福島第一原発と同じ沸騰水型原発の稼働は初めてのこととなり、とりわけ重大な意味を持つものであると、私たちは認識します。
女川原発は、「津波てんでんこ」と言い習わされてきた三陸地方に立地しています。
また2011年の東日本大震災で津波による損傷を受けながら、女川原発がメルトダウンに至る過酷事故には至らなかったのは、燃料冷却のための外部電源5回線のうち1回線だけが無事だったなど、いくつかの偶然があったからでした。事故を回避する絶対的な方法はありません。一度事故が起これば、人間にはコントロールする術はありません。
さらに女川原発で事故が発生した場合の広域避難計画は実効性を欠くとして、石巻市の住民たちが東北電力に対して仙台地方裁判所に起こした女川原発再稼働差止訴訟も続いています。山や海近くに建てられ、事故時には放射性物質を放出する危険のある原発に、完全な避難計画などあり得ないことは、今年1月1日、能登半島が大地震の発生によって甚大な被害を被った際、北陸電力志賀原発の避難経路が寸断され、避難計画の甘さが浮き彫りになったことを思い出せばわかることです。
東北地方で再び大地震、津波が起きないと断言することも、もし大地震、津波が起きても女川原発は大丈夫だと断言することも、不可能です。また、事故が起きた場合、その避難は困難を極めます。仮に避難できたとしても、地域は汚染され、長期にわたって住むことが不可能となり、地域コミュニティーは破壊されてしまうことは、13年前の福島第一原発事故によって、明らかです。
女川原発2号機の再稼働は、原発のある女川町、石巻市の住民が安心して生きる権利を奪うものです。これらの問題はみな、福島第一原発の事故によってすでに学んだはずのことであり、それらの問題は今も何ら解決していません。にもかかわらずこの学びを無視することは、福島第一原発事故によって住民が被り味わった甚大な被害の経験を、ないものとすることでもあるでしょう。
原発は手放さなければならない技術です。そこにはあまりにも多くの解決できない問題があり、それらを無視することは、そこで生きる人々のいのちと人権を甚だしく侵害します。
私たちは、女川原発の再稼働に反対し、営業運転に向けての準備作業の速やかな中止を求めます。
日本カトリック正義と平和協議会
平和のための脱核部会
部会長 光延一郎神父(イエズス会司祭)