日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会(関伸子委員長)は10月7日、石破茂首相に対して声明を発出し、靖国神社秋季例大祭において首相・閣僚が参拝および真榊奉納をしないよう求めた。特に秋の例大祭は、「霊璽泰安祭」という「新規に合祀する祭神の霊璽を泰安する神事」であることから、「このような宗教行事である秋季例大祭に、首相及び閣僚が赴くこと自体、一宗教に対して特別に加担し、また援助、助長、促進する効果を持つものと言わざるを得ません」と主張。憲法20条3項の「政教分離原則」、89条の「公金の支出の禁止」を厳格に順守するよう要請した。
石破首相は17日、「内閣総理大臣 石破茂」名で真榊を奉納した。
声明の全文は以下の通り。
靖国神社秋季例大祭にて首相・閣僚は参拝及び真榊奉納をしないでください
内閣総理大臣 石破 茂 様
私たち日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は、靖国神社の春季・秋季例大祭ごとに、歴代の首相及び閣僚に対し、日本国憲法第20条3項の「政教分離原則」を厳格に守るべく、参拝や真榊等の奉納を行なわないように要請し続けています。それにもかかわらず、首相や閣僚らの例大祭ごとの参拝及び真榊奉納が繰り返されています。是非、今年こそ日本国憲法に立ち帰り、悪しき慣例を見直し、憲法を遵守した政治に改めるよう願います。
昨今、首相らの靖国神社での参拝や奉納が、メディア報道によって、日本政府と靖国神社等が特別な関係にあるかのように宣伝されています。これらは国民に特定の宗教である靖国神社への関心を呼び起こし、かつて戦前・戦中の国家神道体制による思想、信仰統制を思い起こし、今もって多様な意見を抑圧するものとはならないでしょうか。
特に秋の例大祭は、「霊璽泰安祭」という「新規に合祀する祭神の霊璽を泰安する神事」であると靖国神社自らホームページ等で謳っています。このような宗教行事である秋季例大祭に、首相及び閣僚が赴くこと自体、一宗教に対して特別に加担し、また援助、助長、促進する効果を持つものと言わざるを得ません。たとえそれが「私的なもの」であると主張したとしても、政府を代表する者らによるメディアを前にしての一連の行動は、「公的」な影響力を発揮するため、「私的」と言うことはできません。
歴史を振り返れば、靖国神社は戊辰戦争以来、天皇の側に立って戦死した兵士を「英霊」として祀り、顕彰するために創られた神社であり、国民を積極的に戦争に動員し、国民を侵略戦争へと駆り立てる役割を果たしてきました。首相や閣僚らが、これらの歴史の反省を重く受け止めず、同神社への参拝・奉納行為を繰り返すことは、日本政府が歴史に対して無反省であることを国内外に宣明するのに等しいことです。
首相及び閣僚が、一宗教法人である靖国神社の例大祭に、参拝や真榊を奉納せず、憲法第20条3項に定める「政教分離原則」、及び第89条の「公金の支出の禁止」を厳格に遵守するよう要請いたします。
2024年10月7日
日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会
委員長 関 伸子