ミャンマー国軍によるクーデターから2カ月あまり。ミャンマーでは市民らの抗議活動が続き、国内監視団体は、クーデター発生以降の市民側の死者は536人に上るとしている。そのような緊迫した状況が続く中、日本キリスト教協議会(NCC、東京都新宿区)は7日、在日ミャンマー大使館の職員による勇気ある行動と日本政府への要請を支持する声明を発表した。
NCCは、ミャンマー市民が粘り強く築きあげてきた民主主義を、暴力によって破壊し、それに抗して非暴力による不服従抵抗運動 (CDM)を貫く人々へのさらなる武力弾圧は、決して容認できないとし、国際社会と共に、あらゆる働きかけを行うと同時に、ミャンマー国軍の利益供給につながるあらゆる日本企業の交易のパイプを速やかに凍結させる措置をとることを日本政府に申し入れた。
また、日本国内で、CDM運動に参与し、不服従の意思表示のため職務遂行を中断している在日ミャンマー大使館の職員2人が表明した要請文を、当事者の深刻な訴えと受けとめる。ミャンマー国軍政府が、2人に代わって新たに国軍派遣の職員を日本に派遣しようとしていることについて、決してビザ発給をしないでほしいと要求し、現ミャンマー大使館職員2人の生命の保護、法的地位の確保のために日本政府として人道的な措置を講じることを要請している。
声明文と要請文は以下のとおり。
ミャンマー職員の非暴力による不服従運動への支持声明
内閣総理大臣 菅 義偉様
外務大臣 茂木 敏充様私たち日本キリスト教協議会は2021年2月1日にミャンマーで引き起こされた国軍による軍事クーデター と、それに抗議する民衆たちへの無差別な武力攻撃によって多くの死傷者が出ていることに、心を痛めています。 ミャンマーの民衆が粘り強く築きあげてきた民主主義を、暴力によって破壊し、それに抗して非暴力による不服従抵抗運動 (CDM)を貫く人々へのさらなる武力弾圧は、決して容認できるものではありません。日本政府は 一刻も早くこの事態を終結させるため、国際社会と共に、あらゆる働きかけをおこなって下さい。また国軍の利 益供給につながるあらゆる日本企業の交易のパイプを速やかに凍結させるよう措置して下さい。
また、悲痛な思いを持って日本国内に生きるミャンマー人たちにも、この CDM 運動は広がっています。私たち 日本キリスト教協議会は、この CDM 運動を支持し、この運動に身を投じている人々に連帯します。とりわけ、 CDM 運動に参与し、不服従の意思表示のため職務遂行を中断している在日ミャンマー大使館の職員2名につ いて、その身分保障、法的地位の保障が保たれるべきと考えます。しかし、ミャンマー国軍政府はこの2名に代え て国軍派遣の職員を日本に派遣しようとしています。それは、CDM を表明した 2 名の職員を解職することを意 味すると共に、在日ミャンマー人たちにとっての圧力ともなり、CDM 運動への弾圧に他なりません。したがって、 日本政府は、新たに在日ミャンマー大使館に国軍側から派遣されようとしている職員に対して、決してビザ発給 をしないでください。
以下に CDM 運動に踏み切った 2 名の職員が、勇気をもって表明した要請文を掲載いたします。当事者の深刻 な訴えを受けとめ、これらの人々の生命の保護、法的地位の確保のために日本政府として人道的な措置を講じ るよう、日本キリスト教協議会として要請いたします。
【当事者による要請文】
日本政府はミャンマー国軍側である「国家統治評議会」が新たに任命した2名に対し、
新規外交官ビザ発給をしないでください2021年2月1日にミャンマー国軍はクーデターを起こし、民主的に選出された国家元首であるウィンミィン大統領、アウンサンスーチー国家顧問、その他の政治家、内閣幹部を拘束しました。以降、ミャンマー国内では、連日、国軍の武力鎮圧により死傷者が出ており、私たちミャンマー国民、在日ミャンマー人は、民主主義が奪われることに、大きな不安を抱えています。
国軍による人権侵害を憂慮し、民主主義を求めるミャンマーの国家公務員は、市民的不服従運動(CDM) に参加し、国民と共に抗議活動を行ってきました。アウンサンスーチー国家顧問が外相を務める外務省、ネピドー本省、そして世界各国に赴任している在外ミャンマー大使館職員(公務員)が、CDM に参加しました。在日ミャンマー大使館に勤務する一等書記官ウー・アウン・ソー・モー(U Aung Soe Moe)氏、二等書記官ドー・エインドラ・タン(Daw Eaindra Than)氏も、2021年3月6日に CDM に参加しました。この二人は、不服従運動に参加したのであり、ミャンマー国の公務員である外交官を辞職したわけでは、ありません。二人の在日外交官は、暴力によって制圧される国民の側に立ち、共に抗議するために外交官として CDM に参加しています。
よって、両氏は現時点においても、民主的に選出された政府により任命され、正式に日本へ派遣された外交官です。
ミャンマー国民の側に立ち、CDM に参加した外交官に代わって、国軍側は、軍出身公務員を交代要員として赴任させることを計画しました。在ミャンマー日本大使館(ヤンゴン)に、国軍からの外交官ビザ申請があった場合、日本政府は、その申請を決して受理しないよう強く要請します。
不当に政権を掌握し、暴力的に国民を虐殺し続けているミャンマー国軍により結成された国家統治評議会が任命し、派遣する外交官に、日本政府が外交ビザを発行することは、日本政府が国家統治評議会と正規に連携を取り、ミャンマー国内での虐殺を幇助することを表明することとなります。
元来、外交官の派遣は正当な政権により二国間で承認を得て行われるものです。そのため、国軍が任命する「外交官」2 名に対し日本政府が外交ビザを発行し、入国させることは、国軍の国家統治評議会を日本が正式に認めたと、在日ミャンマー国民全員が受け止めます。
日本政府に対し、ミャンマー国軍、国家統治評議会と一切連携を取らぬよう、我々在日ミャンマー国民は何回も要請してまいりました。この度は、日本政府として、在日ミャンマー大使館勤務のため、国家統治評議会が派遣する2名に新規外交ビザを決して発行されませんよう、強く要請いたします。
以上2021年4月7日
キリスト教協議会
議 長 吉髙叶
総幹事 金性済