安心しなさい。わたしだ。恐れることはない。(マルコによる福音書6章50節)
主イエスに命じられて船出した弟子は、逆風にあい、海の真ん中でこぎ悩んだ。弟子たちは長い時間、暗い海の上を漂い、逆風と戦っていた。主は山の上で、逆風と戦っている弟子たちを見守り、彼らのために祈っておられた。そして、夜明けに、海の上を歩いて弟子たちに近づいて来た。今日の聖句は、近づく主が分からず、逆巻く波を見て動揺している弟子たちに語った主イエスの言葉である。「わたしだ」は、主の臨在を示す強い言葉である。主イエスが舟に乗り込むと風は静まった。弟子たちは主の言葉によって、自分たちの不信仰を気づかされるとともに、信仰を立て直され、勇気を得たのである。
この出来事は主の死と復活の後に始まった初代教会において、弟子たちによって伝えられ、語られた。教会は主の命令によって世の海に送り出されたが、ユダヤ人やローマ帝国の迫害という逆風のために、こぎ悩んでいた。そのような時、弟子たちは復活の光のもとで、主イエスが今も変わらずに、自分たちを見守り、祈り、近づいて来るのを知った。そして、「わたしだ。恐れることはない」と語る主の言葉を魂の深みで聞き、信仰と勇気を与えられた。弟子たちは復活の光のもとで、今も臨在し、語りかける主イエスを教会の人々に語ったのである。これによって、教会は逆風にこぎ悩みながらも、主の臨在と主の言葉に励まされて伝道し、福音は世界に広がって行った。復活の主イエスは、天において弟子たちを見守り、執り成し、そして、弟子たちが力尽きる時、「海の上を歩いて」、すなわち、不思議な方法で近づいて来られる神である。「イエス・キリストはきのうも、今日も、また永遠に変わることのない方です」(へブライ13・8)。