三浦綾子の作品や生涯を描いた合唱作品「混声合唱組曲『信仰、希望、愛』三浦綾子への頌歌(オード)」が6月、音楽之友社より刊行された。これは三浦綾子生誕100周年を記念して作られた合唱組曲。三浦綾子記念文学館事務局の難波真実氏が詩を作り、日本を代表する作曲家・指揮者である松下耕氏が曲をつけた。
長年にわたり三浦綾子の作品や生涯を研究し続け、「三浦綾子の生き字引」と言われるほど三浦綾子を知り尽くす難波氏が作った詩は、「春を待つ」「時代を見つめる」「命の讃歌」「いいこと ありますように」の4編。全て神の栄光をたたえる頌歌となっており、その詩作には、生きることの意味をキリスト教信仰に基づく視点で描き、口述筆記の執筆による柔らかい言葉づかいを印象的に用いた三浦綾子のスタイルが存分にいかされている。
この詩を語り継ぐべく力強く付曲した松下氏は、2019年5月に三浦綾子記念文学館を訪れたときに難波氏と出会い、三浦綾子の作品について思いを深くしたという。三浦作品の舞台となった北海道の上富良野や美瑛、さらに代用教員として赴任した尋常小学校があった歌志内などにも訪れ、曲のイメージを膨らませていった。
合唱曲の一部は、2020年に予定されていた旭川合唱連盟創立70周年を記念する第66回旭川合唱祭で演奏することになっていたが、新型コロナウィルスの影響を受け中止となってしまった。合唱活動が大幅に制限されていく中で、いつ演奏できるのかという不安に苦しめられたが、22年10月30日に旭川市大雪クリスタルホールで開催された「あたたかき日光(ひかげ)コンサート」において全曲が披露された。楽譜の序文で難波氏は次のように話す。
2022年は『三浦綾子生誕100年』の記念の年であり、この年に「あたたかき日光(ひかげ)コンサート」と銘打ってこの曲を初演できたのは、奇跡的なことで、類まれなる幸せでした。しかも当日の10月30日は、三浦綾子を生涯支えつづけた夫・光世の命日でもありました。天国で三浦夫妻も喜んでくれたのではないかと思います。
松下氏も、同作の完成には、長い時間をかけた入念な準備と、多くの人たちの温かい協力と愛情が注がれていたことを述べ、「三浦綾子が伝えたかった愛と真理の一端が、この合唱曲により、より伝わるのであれば、作曲者として幸甚の至である」と同作品への思いを語る。また、「広大な三浦綾子の世界を、たった4曲で表現すうことは到底できないと考えているので、いつか、近いうちに難波さんと続編を作る機会があればと、密かに思っている次第である」と次回作への意欲も明かしている。
三浦綾子が持ち続けた信仰、希望、愛。その世界を感じる豊かな音色を、三浦綾子への深い愛と敬意を込めて作った合唱をとおして共有してほしい。
混声合唱組曲「信仰、希望、愛」三浦綾子への頌歌(オード)
A4版/64ページ/本体2,200円+税/発行:音楽の友社(2023年6月刊行)