11月に迫った米大統領に向け正式に民主党の大統領候補となったカマラ・ハリス氏は8月6日、自身の副大統領候補にティム・ワルツ氏を指名すると発表した。現在ミネソタ州の知事を務めるワルツ氏は、これまで国政での知名度は低かったものの、ハリス氏による指名以降、急速に注目を浴びている。政界入り前には高校教師やフットボールのコーチをしていたこともあり、庶民派の政治家として親しまれ(「中西部のお父さん」の愛称も)、有権者にアピールできると考えられている。
宗教の観点から見た時、ワルツ氏はどのような人物なのか。「レリジョン・ニュース・サービス」は8月6日、「ティム・ワルツに関する五つの宗教上の事実」と題する記事を掲載し、ワルツ氏の宗教的来歴を紹介。以下、その要点を抜粋する。
① ワルツ氏はルター派のキリスト教徒。ミネソタ州は全米で最もルター派の多い州の一つで(州民の20%超)、同氏はその典型的存在。同氏が通うのは同州セントポール市のピルグリム・ルター教会(メインライン系)。
② もしワルツ氏が副大統領になった場合、米国史上2人目のルター派の副大統領となる(1人目はヒューバート・ハンフリー。リンドン・ジョンソン大統領時代の1965〜69年に副大統領を務めた。ただし途中でメソジスト教会に転会した)。
③ ワルツ氏の州知事としての政策はこれまで宗教保守派から批判を受けることも。新型コロナウイルス対策として対面での礼拝・集会に規制をかけた際には、同州のキリスト教保守派の反発を受けている。
④ ミネソタ州の黒人市民ジョージ・フロイド氏が2020年5月に白人警官によって殺害された際には、ワルツ氏は同州の諸宗教の指導者らに協力を呼びかけ、正義・安全のためのコミュニティ作りを提唱した。
⑤ ワルツ氏は同州内に多く住むイスラム教徒たちとも良好な関係を築いてきた。イスラム教徒や礼拝施設を標的としたヘイトクライムが発生した際にはそれを強く非難し、被害を受けたイスラム教コミュニティを訪問して連帯を表明するなどしてきた。
以上の来歴をもつワルツ氏は、典型的な「メインライン」(=米国のリベラル/中道のプロテスタント)のキリスト教徒と見てよい。アメリカの伝統的なキリスト教信仰を尊重しつつ、他宗教やマイノリティとも連帯できる、稀有な人材と言えるだろう。
(翻訳協力=木村 智)