オウム真理教の元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(63)に6日午前、死刑が執行された。教団が起こした一連の事件では13人の死刑が確定していたが、執行されたのは初めて。同日、早川紀代秀(68)、井上嘉浩(48)、新実智光(54)、土谷正実(53)、中川智正(55)、遠藤誠一(58)の6人も執行された。
松本死刑囚は、坂本弁護士一家殺害事件(1989年)や松本サリン事件(94年)、地下鉄サリン事件(95年)などを起こし、95年5月、逮捕された。一連の事件で、29人が死亡、およそ6500人が被害に遭った。
2004年、1審の東京地方裁判所は、起訴された全13事件で有罪とし、死刑を言い渡した。控訴審は一度も開かれないまま控訴棄却が決定され、最高裁は06年に弁護側の特別抗告を棄却し、死刑が確定した。
齋藤篤氏(日本基督教団・深沢教会牧師、日本脱カルト協会会員)に話を聞いた。
――近代日本で初めてカルト犯罪で死刑執行がされました。カルトと死刑、どうお考えですか。
「殉教者」が神格化され、英雄視されるというのは長い歴史が証明しています。松本智津夫が死刑になったことで、オウム信者にしてみれば、彼は「殉教者」となるのです。オウム真理教から「アレフ」という新しい団体が作られましたが、彼らの行動が危険視される中で、今回の執行は決して抑止力にはならないと私は思います。むしろ、彼らの勢力を助長する原動力にすらなるのではと危惧しています。
――今回、松本死刑囚を含む複数名の死刑が執行されました。死刑に関しては何か思うことは。
一人の信仰者という立場から言わせていただくなら、「死んで詫(わ)びるより、生きて『十字架』を背負ってほしい」ということです。死をもって罪を償っても、何も変わらない。もちろん、被害者に寄り添うという意味では、別の思いもありますが、イエスの贖いを知る者として、死刑には反対です。