3月26日、フランス・パリのルーヴル美術館は、約50万点に及ぶ所蔵作品の画像や情報を無料公開するデータベース「collections.louvre.fr」を新たに開設したと発表した。
公式サイトではすでに、レオナルド・ダ・ヴィンチ作の名画『モナ・リザ』をはじめ、一般展示している3万点のデータベースを公開していたが、新たなサイトでは他の機関に貸し出しているものや、保管しているものなど未公開作品のデータも閲覧可能だという。
世界で最も来館者数が多いことで知られ、1日では到底回り切ることができないとされるルーヴル美術館。紀元前から中世まで、さまざまな時代の作品が収蔵されており、ヨハネの福音書2章に描かれる、イエス・キリストが最初に起こした奇跡を描いた『カナの婚礼』(パオロ・ヴェロネーゼ)をはじめ、『岩窟の聖母』(レオナルド・ダ・ヴィンチ)、『大工の聖ヨセフ』(ジョルジュ・ド・ラトゥール)、『パリ高等法院のキリスト磔刑』(作者不明)など宗教的作品も多く含まれる。
本データベース上では作者や作品名などキーワードで検索可能。ただ、今のところデータベースで使用可能な言語は英語かフランス語に限られているため、言語が堪能でない人は目的の絵画を見つけるにはやや苦労を強いられるかもしれない。(例えば、先述のカナの婚礼は“Les Noces de Cana”、岩窟の聖母の場合は“La Vierge aux rochers”、大工の聖ヨセフは“Saint Joseph charpentier”といった具合だ)
ちなみに、試しに筆者が“christ”と入力してみたところ、440点以上の該当作品がずらりと表示された。初めて目にする作品の方が多く、美術鑑賞が好きな人であれば上から順に観るのも楽しく、新たな作品との出会いのきっかけにもなるだろう。
一枚の作品につき、全体像はもちろん、一部分をフォーカスした画像も複数用意されており(巨大作品として有名なカナの婚礼に至っては、87枚もの画像が掲載されている)、さまざまな視点から観ることができるのも魅力だ。
絵画や彫刻、宝飾品などジャンル別で検索できるほか、世界的に有名な作品を集めた「MASTERPIECES OF THE LOUVRE」や、新たにコレクションに加わった作品を紹介する「ACQUISITIONS MADE IN 2020」などテーマごとに設けられたアルバムも公開。また、「インタラクティブ・マップ」では展示室ごとに作品を閲覧することも可能だ。なお、すべての作品画像はダウンロード可能で、ライセンスフリーの作品については利用規約に従って無償で利用できるのも嬉しい。
同館のジャン=リュック・マルティネズ館長は声明で、デジタルコンテンツ公開の目的は一般市民から研究者まで全員に役立つことだとし、「今回、初めてすべての人が、パソコンやスマートフォンから無料で、ルーヴルが所蔵する全作品にアクセスできるようになった。このデジタルコンテンツが、ルーヴルを訪れ、実際にコレクションを観てみたい!と思うきっかけになると確信している」と述べた。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、パリのルーヴル美術館は昨年3月に閉鎖され、一時入場を再開したものの、現在も閉鎖中である。
コロナ禍を受けてアート業界にもデジタル化が急激に進んでおり、『キリスト磔刑と最後の審判』(ヤン・ファン・エイク)、『コロンナの祭壇画』(ラファエロ)などを所蔵するアメリカ・ニューヨークのメトロポリタン美術館でも昨年から約37万5000点の所蔵作品をオンライン上で無料公開しており、こちらもダウンロードが可能である。
未だ終息の兆しが見えず、自由に海外へ渡航ができない今、バーチャルで世界的、歴史的作品を楽しんではいかがだろうか。
ルーヴル美術館公式サイト:https://www.louvre.fr/en
ルーヴル美術館コレクション公式サイト:collections.louvre.fr