今年2月に急性心不全のため急逝した俳優・大杉漣さん(享年66)の主演映画「教誨師(きょうかいし)」が10月6日から東京・有楽町スバル座ほか全国で公開される。
教誨師である牧師が、6人の死刑囚と寄り添いながらも、彼らが安らかに死ねるよう導くことは正しいのか葛藤し、また自らの過去とも向き合うことになる……。
全編114分、ほぼ教誨室という限られた空間の中で繰り広げられる会話劇。そのため、覚えなければならないセリフの量が膨大で、大杉さんが脚本を読んだとき、「役者にケンカを売っているのかと思った」ほどだという。
遺作となったテレビドラマ「バイプレーヤーズ」(テレビ東京系)にあるように、大杉さんは名脇役としてさまざまな映画やドラマに出演してきたが、この作品は大杉さんにとって最後の主演映画となった。また、本作で初めてエグゼクティブ・プロデューサーも担当している。
脚本・監督の佐向大(さこう・だい)氏は71年生まれ。大杉さんとちょうど20歳離れている。「3年前、小さな喫茶店で、この企画を一番最初に話したのが大杉さんでした。『いいね、やろうよ』。その一言をきっかけにこの作品が生まれました」というように、大杉さんは以前、佐向氏の監督作品「ランニング・オン・エンプティ」(2010年)に出演している。佐向氏はこの最新作の製作意図をこう語る。
「いい加減で適当で、できるだけ責任から逃れたい。私はそんな人間です。おそらく死刑囚もそうだと思います。じゃあなぜ私は彼らじゃないのか。罪を犯した者と犯さなかった者はどこが違うのか。なんで死ぬのは嫌なのか。なぜ生きたいのか。そもそも死者と生者の境界は何か。ひょっとしたら何も違いはないし、何の理由もないのかもしれません。だったら、自分が日頃大切に思っていることや、しがみついているものはいったい何なのだろう。そんなことを私自身もこの作品を通して知りたいと思いました」
大杉さんと対話する死刑囚に玉置玲央、烏丸せつこ、五頭岳夫、小川 登、古舘寛治、光石研。
近年、堀川恵子『教誨師』(講談社)というノンフィクションもロングセラーになっている。ちなみに、この本で取材された教誨師は僧侶だ。
牧師と接することがほとんどない日本。その一般メディアで描かれる牧師は、どれだけ本物の牧師に近づけるだろうか。