関西学院大学(兵庫県西宮市)は9日、滋賀県ならびに近江八幡市と「ヴォーリズ建築等を通じた連携協定」を締結し、その締結式が滋賀県公館(大津市)で行われた。締結式では、同大の村田治学長、三日月大造県知事、小西理市長が出席し、西宮上ケ原キャンパスの全体設計を手掛けた建築家「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ」の功績や建築を通じて地域活性化と人材育成を行うことで三者が合意し、今後ヴォーリズ建築の保存や研究事業に尽力することを確認した。
同大は、西宮上ケ原キャンパスがウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880〜1964)による全体計画で建設され、大学全体としてヴォーリズ建築を学びと探求の場として受け継いでいる。また、ヴォーリズがキャンパスの設計に深い関わりを持っている。こうしたヴォーリズを通じたつながりから、研究と保存、さらには観光振興・人材育成・地域活性化などに連携して取り組むことになった。
今後は、相互に協力しながら、さまざまな分野で協働事業を進めていく。具体的な事業として、▷ヴォーリズ建築の研究と保存、▷ヴォーリズ建築を活かした地域活性化・観光振興、▷ヴォーリズを通じた教育・交流――の3項目が挙げられている。
連携協定の締結にあたり、村田治学長は次のように説明する。
「滋賀県、近江八幡市は、ヴォーリズが拠点として活躍した地です。近江八幡市には多くのヴォーリズ建築が現存しています。その建築等を通じ、地域活性化と人材育成に三者で取り組むとともに、関西学院大学としてもヴォーリズ建築の保存に積極的に取り組んでまいりたい」
ヴォーリズは、キリスト教伝道を目的に1905年1月29日に来日。近江商人の士官学校といわれた滋賀県立商業高校(現・滋賀県立八幡商業高校)で英語教師として働くため、同年2月に近江八幡に着任した。以降、83歳の生涯を終えるまで近江八幡に留まり、キリスト教の伝道と教えに基づく社会教育、出版、医療、学校教育などに携わっている。
建築家としては、アメリカ西海岸に見られるスパニッシュ・ミッション・スタイルの建築デザインを特徴としながら、日本人の住まいや慣習などにも配慮した建築物を数多く残した。その代表作の一つが、同大西宮上ケ原キャンパスの建築群。赤い瓦屋根とクリーム色の外壁を特徴とする「スパニッシュ・ミッション・スタイル」で統一され、その美しさは日本でも屈指の存在だ。なお、ヴォーリズがキャンパス構想の基点として中心的存在に位置づけていた時計台は、2009年に「登録有形文化財」に登録されている。
関西学院大学では協定に先駆け、ヴォーリズが来日した日とされる1月29日、建築学部内に「ヴォーリズ研究センター」(代表=角野幸博・建築学部長)を開設した。ヴォーリズの作品、思想、信仰を学術的に検証することが目的で、今後は、膨大な建築資料のデジタルアーカイブ化、および新たな視点と手法の導入による研究のさらなる深化、建築物を通した教育貢献・地域貢献に取り組んでいく予定だ。