子どもたちのコレカラのために 稲葉基嗣 【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】

私は両親がクリスチャンの家庭で育ちました。子どものころ、礼拝の日はとても苦痛でした。日曜日の朝、観たいアニメを途中で中断させられ、車に乗って教会へ向かいます。そこで待っていたのは、教会学校のお勉強の時間です。教会学校が終わった後も、静かに過ごさなければいけない礼拝の時間は続きました。仲の良い同世代の友人がいれば良かったのですが、幼いころ教会で仲良くしていた子たちは、気づいたらみんな親の転勤を理由にいなくなってしまいました。教会学校に集う子どもが少ない時期は、大人たちに囲まれて監視されるような時間に感じていました。あの時間を通して、聖書を学び、信仰教育がなされ、多少なりとも今の私を形成していったのだと思いますが、苦痛で退屈な時間でした。今思えば、教会の中に自分の居場所を感じることができていなかったのかもしれません。

牧師という立場になった今、子どもたちのために教会がどのように居場所を作っていくのかについて常に考えさせられています。喜ばしいことに、小山教会は現在、子どもたちがとても多い時期です。毎週の礼拝出席者の3割弱が子どもたちです。私の前任者の時から礼拝の前に教会学校は行わず、子どもたちが一緒に参加することを前提として礼拝が守られてきました。ですから、たとえ子どもたちが多い時期であっても、子どもたちやその家族を必要以上に教会に拘束することになってしまう教会学校は行っていません。私が子どものころに経験した苦痛を、彼らが経験せずに済んでいると良いのですが。

もちろん、そのような消極的な理由で子どもたちとの関わりを考えているわけではありません。子どもたちにとって教会を辛い場所にしないことは、大人たちが最低限すべき配慮だと思います。その上でどのように彼らに信仰教育を行っていくかについて、私も教会のメンバーも頭を抱えつつ、いろいろなチャレンジをしています。

今年の夏は、子どもたちのために二つのことを計画しています。一つは、東京基督教大学が毎年行っている夏季伝道旅行の受け入れ教会に申し込んだことです。地方の教会の現実として、青年世代はどうしても大学や就職などで小山市を離れてしまいます。部活や受験などの影響で教会に来なくなる子たちもそれなりにいます。ですから、今の小山教会の子どもたちにとって、自分たちよりも少し年齢の上のクリスチャンの若者たちと関わり合う機会がほとんどないことは大きな課題です。身近な信仰者のロールモデルがないのですから。今年の夏、学生たちが小山教会を訪問してくれることにより、自分の将来像を描けるような身近なロールモデルと子どもたちが出会えることを期待しています。基本的に、子どもたちと仲良く遊んでもらおうと思っていますが、その経験が子どもたちのコレカラを築いていくと期待しています。

もう一つの計画は、教会で久しぶりに1泊のキャンプを行うことです。このキャンプは教会の中だけで行わず、関東地区のナザレン教会に所属している子連れの青年たちにも声をかけて開催する予定です。自分が毎週通っている教会の外にも、自分と同じように、神を信じている子どもがいるんだなという経験となれば良いなと思い、こちらも計画中です。大きなプロジェクトを二つ進めているので、若干無理をしている気もします。けれども、教会のコレカラ、子どもたちの信仰のコレカラを築いていく上で、とてもやりがいのある夏が過ごせそうで、私も教会のメンバーもコレカラにワクワクしています。

 いなば・もとつぐ 1988年茨城県生まれ。日本大学、日本ナザレン神学校卒業後、数年の牧会期間を経て休職し、アジア・パシフィック・ナザレン神学院(フィリピン)とナザレン・セオロジカル・カレッジ(オーストラリア)に留学。修士号取得後、日本ナザレン教団小山教会に着任。趣味は将棋観戦とネット対局。

【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 「教会っぽくない」月報 稲葉基嗣 2024年6月11日

関連記事

この記事もおすすめ