「礼拝したい」の声に応えて 稲葉基嗣 【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】

平日の朝になると、私が現在牧師として着任している小山ナザレン教会のすぐ近くの通りを歩く長い行列を見かけます。50名ほどいるでしょうか。日本語を含めいくつかの言語が聞こえてきます。時々、あいさつをしてくれる方たちもいます。小山市に引っ越してきた当初は、この行列がどこから来て、どこへ向かっているのか分かりませんでした。

しばらくすると、この行列の正体が教会のそばにある、きぼう国際外語学院で学ぶ方たちだと分かりました。技能実習生として日本語を学ぶためにアジアのさまざまな国から来た彼らは、教会の近くにある寮でおよそ1カ月間生活します。そして、小山での学びを終えた後、実習先の地域へ旅立ちます。

数カ月に一度くらいの頻度で、ここで学ぶクリスチャンの学生たちが小山教会の礼拝に足を運んでくださいます。ほとんどの方は、旅立つ直前に礼拝に出席されます。「来週から◯◯(地名)へ行きます」と教えてくれる彼らに、私や教会のメンバーも「がんばってね」「お祈りしているからね」と言って、送り出します。

2週間ほど前にも学院の学生が礼拝に来てくださいました。その方は、初めて礼拝に来た方に記入をお願いしているコミュニケーション・カード(来会者カード)に、「礼拝がしたいです」と書いていました。住み慣れた土地や文化を離れて、定期的に神を礼拝できる場所を探すことはとても過酷なことだと思います。

私も海外で教会を探したことがありましたが、幸運にも教会探しに苦労することはありませんでした。けれど、初めて出席する現地の礼拝の英語は理解できるのだろうか。教会になじめるだろうかなど、不安を感じながら教会へ足を運んだことを今でも思い出します。だからこそ、「礼拝がしたい」というコメントに、魂の訴えのようなものを感じました。

現在、小山教会では日本語での礼拝のみ行っています。けれども、言語が完全に分からなくても、「礼拝がしたい」という思いを抱いて教会に足を運びたいという方たちは確実にいるでしょう。ですから、教会として環境を整えておく必要性を強く感じています。

以前、私が牧会していた教会では、日本語が第一言語ではない方々が礼拝前に訪れた場合、急いで説教原稿をグーグル翻訳に入れて、プリントアウトをしてお渡ししていました。小山教会では現在、第一言語が日本語ではない方たちが訪れた際、毎週の週報と礼拝説教の内容が自動翻訳されるウェブサイトを案内しています。現代のテクノロジーの進歩のおかげで、完全ではありませんが、手元にスマートフォンさえあれば言語の壁を越えて、一緒に礼拝ができるようになってきました。少しずつ壁や障害となっているものを取り払い、時には越えて行きながら、より多様性に満ちた教会の姿を小山の地で味わいたいものです。コレカラの夢は広がります。

小山教会にとって、コレカラの課題は、「礼拝をしたい」という声にどうやって応えていくかです。足を運ぼうと思い立ってくださる方たちが、たとえ日本語をうまく話せなくても、安心して神を礼拝できる場所として、小山にわたしたちの教会はあるんだよという声を発信する手段をコレカラに向けて模索中です。

 いなば・もとつぐ 1988年茨城県生まれ。日本大学、日本ナザレン神学校卒業後、数年の牧会期間を経て休職し、アジア・パシフィック・ナザレン神学院(フィリピン)とナザレン・セオロジカル・カレッジ(オーストラリア)に留学。修士号取得後、日本ナザレン教団小山教会に着任。趣味は将棋観戦とネット対局。

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