マッカイ宣教師のコレクションと母教会への宣教報告 王 政文 【この世界の片隅から】

今回は、19世紀に海外からの宣教師が台湾に来た後、どのように母国の教会に宣教の成果を報告し、説明したかについて紹介したい。

キリスト者にとって重要な使命の一つは、キリストの召命に従い、神の知恵と力を通して、失われた人々に対して神の国の救い・福音を全世界に広めることである。カナダ長老教会は1871年に初の海外宣教師としてマッカイ(George Leslie MacKay)を台湾に派遣し、彼は1872年に淡水(現新北市淡水区)を拠点に北部台湾での宣教活動を開始し、1901年の死までの30年間、伝道した。彼の回想録『フォルモサ紀事』(原題はFrom Far Formosa. the Island, ItsPeople and Missions。「フォルモサ」は台湾の別称、「美しい」の意味)によれば、彼は1872年から1895年にかけて、60の教会を設立し、3000人以上の信徒に洗礼を授け、60名以上の現地伝道者を育成した。

この期間、マッカイの宣教活動は非常に多忙であり、福音を伝え、見知らぬ人々に接触し、信徒を指導し、礼拝を執り行い、伝道者を育成し、病院を設立し、教会や学校を開設し、各地の教会を訪問しなければならなかった。また、宣教の成果をカナダ長老教会の総会に報告し、継続的な支援と経済的援助を確保することも重要であった。単に報告書を送るだけでなく、「宝物」のコレクションを通じて成果を示す必要があったため、彼は自宅に「博物館」を設立した。この博物館のコレクションは、学生に対する教育と一般への展示の両方の目的を果たしていた。日本統治下の1896年12月8日、第三代台湾総督乃木希典(1849~1912年)が淡水を訪れ、マッカイの博物館を見学し、そのコレクションに強い興味を示した。その後、参謀を派遣して博物館の収蔵品を撮影させている。

マッカイのコレクションは、主に自然標本と文化財に分類される。自然標本には、地理学・鉱物学・植物学・動物学に関連する各種標本のほか、貝類・海綿類・珊瑚が含まれている。文化財には、漢人・平埔族・原住民に関連する物品が含まれ、神像・神主牌・宗教用品・楽器・道士服・漢人神明に関連する品々、農具・武器、さらには原住民の生活に関する遺物が収蔵されている。

マッカイは台湾滞在中に2度帰国し、そのたびに台湾で収集した標本や文化財をカナダに持ち帰った。彼は故郷で各地の教会を巡回し、講演や説教を行い、遠くはるかなるフォルモサ(台湾)での宣教活動とその成果を紹介した。講演では、台湾の偶像や地図などを用いて台湾の文化や信仰を説明し、台湾での宣教活動の困難さとその成果を紹介した。これによりカナダの教会関係者は、台湾での宣教の意義と、自分たちの支援が実を結んでいることを理解し、さらに献金して台湾宣教を支え続けたいという思いに駆り立てられた。

マッカイが寄贈したコレクションは現在、カナダのロイヤル・オンタリオ博物館に所蔵されており、人類学部門、中近東・アジア文明部門の織物服装セクションと極東セクション、自然史部門の哺乳類動物セクションに保管されている。

ロイヤル・オンタリオ博物館

人類学部門が保管しているのは、主に台湾原住民の文化財であり、小さなマッチ箱に収められた各種植物や鉱物標本も含まれている。先住民の文化財には、頭飾り・腕飾り・胸飾り・首飾り・足飾り・ベルトなどの身体装飾品が多く含まれる。その他、祭儀用具・武器・容器・楽器・喫煙具・模型なども含まれている。これらの文物は、北部平埔族(クバラン族またはケタガラン族)・タイヤル族・アミ族・サイシャット族・ブヌン族などの部族に由来するものである。

織物服装セクションに保管されているのは、台湾先住民と漢人の織物服飾である。先住民の織物には、上衣、スカート、肩掛け、ベルト、帽子、織布、織布用具などが含まれており、北部平埔族の全套花嫁衣装や、彫刻入りの織布用具、バナナ繊維の織布が特に貴重である。

極東セクションに保管されている漢人の文化財には、漢式の神像が多く含まれており、哺乳類動物セクションには、マッカイが先住民の部落で採集したイノシシやシカの頭骨標本、センザンコウの剥製標本が保管されている。

マッカイ収蔵のセンザンコウの標本

(原文:中国語、翻訳=松谷曄介)

王 政文
 おう・せいぶん 国立台湾師範大学歴史学博士、東海大学歴史学部副教授・同学部主任。専門は台湾史、台湾キリスト教史。特にキリスト者の社会ネットワーク・改宗プロセス・アイデンティティーの相関関係を研究。著書に『天路歴程:清末台湾基督教徒的改宗与認同』(2019年)など。

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