トランプ政権が難民とみなす南アフリカ系白人の小グループが今週米国に到着すると、これまで米国政府と契約を結び、再定住支援を行ってきた非営利団体が支援を行う。しかし、米国聖公会ミニストリー(EMM)はそれらの団体の一つにはならないとの姿勢を明らかにした。米国聖公会ニュース・サービスが5月12日に報じた。
ショーン・ロウ首座主教が同日発表した書簡によると同聖公会は、1994年に極端な人種隔離政策であるアパルトヘイトが終結するまで南アフリカを統治していた白人少数派であるアフリカーナーの迅速な移民受け入れへの参加を求めるトランプ政権の要請を断った。EMMは、トランプ政権が連邦政府による広範な再定住プログラムを無期限に停止した今年初め以来、新規到着者への支援を行っていない。
AFP通信などの報道によると、トランプ政権はこれをめぐって同聖公会を批判したという。
ショーン・ロウ首座主教の書簡は以下の通り。(エキュメニカル・ニュース・ジャパン)
米国聖公会のみなさまへ
本日は、米国聖公会の難民再定住支援事業を率いる組織である「エピスコパル・マイグレーション・ミニストリーズ」(EMM)についての大切なお知らせをお伝えします。
1月以来、米国聖公会が参加する米国難民受け入れプログラムは、実質的に停止状態にあります。新たな難民が到着することはほとんどなく、全国の定住支援機関で数百人の職員が解雇され、すでに到着している難民のための定住支援資金も不確実な状況です。さらに、2週間ほど前、米国連邦政府はEMMに対し、連邦補助金契約の条件に基づき、米国政府が難民と認定した南アフリカ出身の白人アフリカーナー(主にオランダ系の南アフリカ生まれの白人)を定住支援するよう要求しました。
米国聖公会の、人種的正義と和解に対する揺るぎない働き、ならびに、南アフリカ聖公会との歴史的なつながりを踏まえ、私たちはこの措置を講じることはできません。したがって、連邦会計年度末までに、米国連邦政府との難民再定住助成金契約を終了することを決定しました。
この決定の理由と、EMM事業が直面する今後の課題について、明確にしておきたいと思います。
特定の難民グループが、極めて異例な方法で選別され、長年、難民キャンプや危険な状況で待機している多くの難民よりも優先的に扱われるのを目の当たりにするのは、痛ましいことです。米国への入国を拒否されている多くの難民が、イラクとアフガニスタンで私たちの軍隊と共に戦い、それ故に故郷で危険にさらされている勇敢な人々であることに、私は悲しみと恥を感じます。また、宗教的迫害の被害者、とりわけキリスト者たちが、ここ数ヶ月間、避難を認められていないことも悲しみとなっています。
キリスト者として、私たちは政治的な変動に左右されるのではなく、神の国が社会の周縁に追いやられている人々の苦闘を通じて私たちに示されるという確かな智によって導かれるべきです。イエスは、私たちが主を愛するように、貧しい者や弱い者を愛するように命じています。私たちはその命令に従わなければならないのです。今、それが意味するのは、連邦政府の難民再定住プログラムへの参加を終了し、他の方法で移民を支援するために資源を投資することなのです。
およそ40年間にわたって、EMMは、教会は移民と難民の中にキリストを探し求めるのだ、という誓いのために手を差し伸べてきました。この間、私たちは約11万人の難民を支援し、その多くは現在、米国市民となり、私たちのコミュニティ、職場、地域社会の一員として愛されています。EMMは過去数年間、ウクライナ、コンゴ民主共和国、ミャンマーからの人々を定住させました。私たちは国籍を問わず、世界中の脆弱な人々を支援してきました。
3月以降、EMMの専任チームは、新政権の就任直前に、またはその最初の数日間に到着した人々を支援する約束を果たしてきました。現在、連邦政府資金による難民再定住プログラムからの撤退を決定したため、私たちは行政府に対し、連邦財政年度末の9月までにすべての連邦政府資金による働きを段階的に終了するための相互合意を目指すよう要請しました。影響を受ける職員に対し、広範な再就職支援サービスと退職手当を提供するため、協力しています。
以前も述べたように、政治情勢の変化は、世界でもっとも脆弱な人々との連帯の誓いを変えるものではありません。私たちは、この約束を再確認します。難民定住支援機関としての公私連携はもはや持続可能ではありませんが、教会全体で移民と難民を支援する計画を策定中です。その内容は以下の通りです:
【教区パートナーシップ】教会内には、あらゆる形の移民を支援する活気ある奉仕活動が展開されています。米国聖公会の信徒は、教育、直接的な支援、提言を通じて難民定住者を支援しています。教区はまた、移民の根本原因に対処するためにも取り組んでいます。私たちは、これらの奉仕活動と私たちの中にいる移民を支援する努力を倍加することを誓います。
【グローバルな連携】私たちは、米国聖公会とアングリカン・コミュニオン(世界聖公会)の各国・地域で強制的に移動を余儀なくされた移民を支援する奉仕活動に投資します。これには、ヨーロッパにおける私たちの強力な支援活動が含まれます。ヨーロッパにおける「聖公会諸教会会議」は、過去2年間で主に北アフリカ、ウクライナ、中央アジアから来た14万人以上の難民を支援してきました。また、私たちは、中米聖公会各教区のパートナーと協力し、安全を求める人々を支援し続けます。
【難民支援の継続】現在の行政府により、新たな難民の受け入れと資金提供が制限されていますが、過去数年間にEMMが受け入れた数千人の難民は依然として支援を必要としています。私たちは聖公会の信徒に、再定住した難民とつながり、長年提供してきたサービス(言語支援、継続教育、保育支援、職業訓練)を継続する方法を模索するよう呼びかけます。民間スポンサーの支援により難民の再定住が再開された場合、新たな可能性を模索します。
【資金調達】私たちが離脱する連邦政府の補助金の規模を理解することが重要です。近年、EMMは年間5000万ドルを超える連邦資金を受けてきました。これは寄付金や投資収益で補填できる損失ではありません。しかし、教会全体での新たな移民支援事業と、この事業におけるパートナー団体への資金調達を推進します。この新たな取り組みへのご支援は、EMMのウェブサイトで寄付を行うことで可能です。
今後数週間で、EMMは、参加方法に関する詳細な情報を共有します。その間、この国への入国許可が下りていない審査済みの難民、連邦政府の助成金終了により影響を受ける職員、そして私たちの連邦政府の難民定住支援事業の終了を悲しむすべての人々のために、どうか、お祈りください。
復活されたキリストへの信仰が、この混乱の時代を乗り越えるための支えと導きとなりますように。
米国聖公会総裁主教
ショーン・W・ロウ
The Most Rev. Sean W. Rowe
Presiding Bishop
The Episcopal Church
(訳:西原廉太)