【インタビュー】一人ひとりの子どものいのちを生かす教育を目指して 自由学園理事長の村山順吉さんに聞く(後編)

前編を読む)

──クリスチャンになったのはいつ頃ですか。

3代続くクリスチャン家庭で育ったのですが、子どもの頃はあまり教会へ行きませんでした。祖父母はいつも神様の話をしていて、私が教会へ行くことを願っていましたが、母は無理強いしてはいけないと思ったのか、そういったことはいっさい口にしませんでしたね。

高等科の頃に、母が通っていた日本バプテスト連盟・府中バプテスト教会(東京都府中市)へ一緒に通うようになり、大学院1年生の時に日本基督教団・境南教会(東京都武蔵野市)で洗礼を受けました。

村山順吉理事長

──自分から教会へ通おうと心が変えられたきっかけは。

私は17歳の頃、少し荒れていました。当時は「音楽の道へ進もう」という夢があったのですが、「そんな自分が、なぜ耳が片方ないというハンディを負わなければいけないのか」と、やり場のない苦しみや怒りでいっぱいになっていました。

そんなとき、生後間もない私を父が抱いて東京中の病院を回ったということを聞かされたのです。当時の医学では治らないと、すべての病院で断られ、最後に産院へ戻ろうとした父がしたのは、東京でいちばんきれいなタクシーに私を乗せることでした。精いっぱいのことをしてくれた父の愛を感じ、父は当時、クリスチャンではありませんでしたが、「父を通して神様が働いてくださっている。その愛に応えなくては」と感じて立ち直り、教会へ通うようになったのです。

自由学園女子部食堂

 

──2021年に自由学園は創立100周年を迎えますが、これからの児童教育について思いを聞かせてください。

いま、「100周年を前に改革を」と言ってはいますが、本来は毎日、改革していくべきだと思っています。「一人ひとりのいのちが最も良く伸びるために、どのように支えたらよいのか」ということは、毎日、子どもたちを前にして初めて与えられることなんですね。

子どもたちと共に聖書について学ぶことももちろん大切です。その上で、私を含めた大人自身が聖書に基づいて懸命に生きることそのものが大事ではないかと思います。

自由学園の教育方針として何より大切にしているのは「人間教育」です。たとえば、女子部では料理や裁縫、男子部では植林や産業などと、それぞれ分かれて学んでいる科目もあります。しかし、中には「植林をやりたい」という女子や、「料理をやりたい」という男子がいるかもしれない。だったら、性別で分けるのではなく、みんなで関われるような仕組みにできないだろうかと考えています。

常に願っているのは、子どもたちが学校生活を送る中で、大前提として、「あなたのことを本当に大切に思っているよ。ここはあなたの場所だよ」と感じてもらえたらということです。羽仁夫妻を通して主イエスがつくってくださったこの学園で、私自身も本当に大切に育てられてきました。

子どもたち一人ひとりの存在を大切にしながら、それぞれの力をより良いかたちで伸ばすために取り組んでいけたらと思います。長所も短所もある一人ひとりが、お互いに尊敬し合って、力が足りないところを補い合っていけるような社会をこの学校の中にまずつくっていきたい。そして、ここで育った子どもたちがいずれ社会に出て、少しでも次の時代を変えていってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。

 






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