最近、未知の団体主催のオンライン聖書講演会の宣伝がフェイスブック上によく表示されるが大丈夫か? そんな声がネットで話題になっている。案内に書かれているURLをクリックすると「ELC JAPAN」という団体の聖書勉強会のホームページに飛ぶ。「聖書勉強会」という表現は韓国語から来ている。「聖書は事実だ」というタイトルの聖書講演シリーズ動画が再生できる。
同ページの説明によると、「聖書は事実だ」は、グォン・シンチャン牧師(1923~1996年)が「聖書が本当に真実であることを証明する講演シリーズ」。グォン牧師は生前、世界各国の伝道集会に招待されて「聖書は事実だ」の講演を行い、講演内容は出版され、宗教分野のベストセラーにもなった、と案内されている。
ELC Japanの聖書勉強会のホームページ。トップページの動画「聖書は事実だ」とクリックすると、クオンパの源流クォン・シンチャン氏(故人)の生前の聖書講演が再生される。
「聖書は事実だ」の映像は、1992年に韓国で一週間にわたり行われた集会の講演。「過去30年余の間、この講演を通じて韓国はもちろん、世界中の多くの人々が聖書の中の真理を悟り福音によって生まれ変わることが出来ました。この講演は、現在まで57カ国22の言語に翻訳され、世界中の多くの国の人々に神のすばらしい計画とイエス・キリストの愛を伝えるために使用されています」と宣伝している。
グォン(クォン)・シンチャンは、韓国で異端とされている救援派(クオンパ)を1960年代に大邱(テグ)で創設した人物。クオンパはその後3つのグループに分かれ日本にも入って来ているが、いずれも韓国の主要教団から異端規定を受けている。
同派では「救いを悟ることのみが救いを得る道である」とし、救われていれば(たとえ殺人のような)罪を犯しても悔い改める必要がないと教える。クリスチャンになったのに悔い改める一般の教会の信者は救われていないという理屈で、クリスチャンを伝道のターゲットにする。クリスチャンに近づき、「あなたは救われていますか?」「今週悔い改めましたか?」「おかしいですね。救われたら悔い改める必要がないのに、悔い改めたということは、あなたは救われていないのです。私たちの教会に来れば本当の救いがわかります」というのが典型的な伝道のアプローチで、「救援派」と言われる所以でもある。
悔い改めを否定することから、倫理的なトラブルを起こしやすいことが指摘されている。クォン・シンチャンの跡を引き継いだキリスト教福音浸礼会の代表ユ・ビュンオン(故人)が率いた清海鎮(チョンヘジン)海運の大型旅客船セウォル号が2014年に起こした沈没事故で、船長が乗客の救助を怠り殺人罪に問われたが、その背景には罪の責任を軽視するクオンパの体質があったと韓国の異端専門家らは指摘している。