──「教会をつなぐ」ということについて具体的に教えてください。
大嶋:KGKが70年、この国で役に立ってきた大きな理由は、「教会を愛して生きる」ということを徹底してきたことだと思います。私が大学時代に通っていた教会は10人くらいの教会で、いちばん歳の近い人が38歳くらいだったんですね。近くにある京都福音自由教会(母教会と同じ日本福音自由教会協議会)には学生がたくさんいたので、「そっちに行ったほうがよかったのではないか」と思った時期もありました。しかしKGKの主事から、「絶対に教会を移ってはダメだ」、「教会に祈られ、支えられてKGKはやっていくんだ」と言われ、KGKで経験した良いものを教会に持ち帰ることが自分に託されていることだと考えるようになりました。
「KGKは教会を愛する筋トレだ」と僕はよく言うんですけれど、交わりを愛する訓練みたいなものがKGKの学内活動にはあって、そういう意味では、教会を愛する筋トレを学生時代にするのだと言っています。
──教会の反応はいかがでしょうか。
大嶋:総主事をやっていて嬉しいのは、いろいろな教会を訪問する中で、長老さんや役員さんが「私、KGKだったんです」と言ってくれることです。大学時代、KGKで活動をして、教会から離れず、牧師の側に立ち続けているということを知る時に、「KGKをやっていてよかった」といちばん手応えを感じます。学生時代、勢いのある学生はいくらでもいるのですが、卒業した後も教会を愛して生きていくというのが、学生伝道の実なんです。KGKが70年間続いてきたのは、「教会を愛する」というスピリットを大切にしてきたからこそ、諸教会からも信頼していただける働きになったのだと思います。
──SNSなどについては、どのような考えをお持ちですか。
大嶋:学生たちは、優しい交わりを持って、つながることがとても上手です。それは伝道にも非常に生かされています。教会から離れてしまっても、必ずつながり続けようとしてくれます。相手がラインを切ってしまったとしても、つながる方法を探すし、かといってガツガツいかないで、優しいつながり方を丁寧にやるんですね。そういうのは、今の若者たちが持っている非常に強い力だと思います。
吉澤:たとえば、今の学生は1日中ユーチューブ見るとか、ラインをやるとか、自己管理の問題がありますが、これは媒体(メディア)が変わっただけで、昔から問題としてはありました。KGKでは、SNSとの関わり方などの学びを提供したりして、学生たちと一緒に考えていくという取り組みをここ数年やっています。
──時間管理、自己管理というソーシャル・スキル的なトレーニングなどもされるのですか。
吉澤:分科会などでやります。
大嶋:この時間管理の問題、優先順位、恋愛、結婚、性のテーマを学生時代に教えることは、主事にとってプロフェッショナルにやらなければならないスキルだと思っています。
──カルト対策などもあるのでしょうか。
大嶋:新主事研修や主事の勉強会でやっています。新しいカルトの情報を教えてくれる専門の人がいるので、そういうカルトに出会った時にどう対応すべきかを学びます。カルトはKGKの中にも入ってきます。学生は優しいから、「あの人を排除してはいけないのではないか」という気持ちになってしまうこともあります。しかし、諸教会から送られてきた学生たちを守らなければいけないので、私たちは毅然とした対応をします。ただ、カルト対策がKGKの働きの中心ではないので、起こってくるカルト問題に対しては、知恵深く、諸教会との連携の中で、信頼のあるカルト対策をすることが、学生伝道団体の私たちに求められていることです。
矢島:カルトにとって学生はメイン・ターゲットなんです。だから、どんどん新しいのが入ってきて、勧誘の手口も巧みになっています。そんな中でKGKができることは、可能な限り情報提供をして、そういうところに巻き込まれないようにする。それにはまず、きちんとした信仰を持つことが大切です。そうすることで、変なところに巻き込まれそうになっている学生と出会った時に、KGKの学生がしっかり対応ができます。救出活動に入っていくことはできないですが、KGKの学生がきちんと情報を持っている。いざという時に対応できるようなつながりを持っていることが、KGKにできることだと思います。
──KGKの教育というのは、どのようなものでしょうか。
大嶋:KGKの学生訓練のいちばんの推しは、NET(National Evangelical students Training:ナショナル・エヴァンジェリカル・スチューデンツ・トレーニング)です。毎年2月から3月に300人規模で開催しています。5泊6日で、4つのストランド(ストランド1「組織神学」、ストランド2「聖書神学」、ストランド3「歴史神学」、ストランド4「実践神学」)を学びます。学生時代に神学4部門を学び、それが4年の間に網のように組み合わされ、しっかり組み合わさった時に、魂を導き入れることができるようなネットを張ることができます。骨の太い、息の長いクリスチャンを育てることは何よりも求められていると思います。かなりタフさが求められる学生訓練ですが、神学的な学びをやるのはKGKの強みです。教会の側、聖書の側、神様の側に立って人生を考えることができるようになるという意味で、今KGKの売りである学生訓練です。
──最後に、70周年にあたってのKGKの礎の言葉、「遣わされた地で福音に生きる」について教えてください。
大嶋:KGKには、先ほどの3本柱以外に「派遣意識」というスピリットがあります。遣わされた場所で神様を証しすることを使命としています。さらにもう一つ、「全生活・全生涯をもって証しする」というのがKGKのセールスポイントです。それをトータルで表したのもので、70周年を機にKGKのコアバリューとしてまとめられた「KGK礎の言葉」が、「遣わされた地で福音に生きる」です。直接的な伝道だけではなく、結婚生活など、生涯にわたって「遣わされた地で福音に生きる」土台を作るというのがKGKの伝道のあり方です。