聖書事業懇談会が4月10日、大阪クリスチャンセンター(大阪市中央区)のOCCホールで開かれた。そこで、「聖書協会共同訳」についての講演を、翻訳者・編集委員である飯謙(いい・けん)氏(神戸女学院大学総合文化学科教授)が「聖書翻訳から啓(ひら)かれたこと」と題して行った。その内容を連載でお届けする。
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はじめに
現在、日本聖書協会は、「新共同訳」の後継となる翻訳を準備しており、2018年12月に出版の予定です。
日本聖書協会ではほぼ30年ごとに改訳を行っています。前回は1987年出版の「新共同訳」、その前は55年の「口語訳」、さらにさかのぼりますと、第二次世界大戦を挟む17年の「大正訳」、そうして出発点となるのが1887年の「明治元訳」です。
それぞれの時代にふさわしい言表をもって、キリスト者はもちろん、キリスト者でない人にも、人類共有の財産と言ってよい大切なメッセージを届け、心を耕し、新鮮な空気を吹き入れてきました。
私は2010年からこの翻訳事業に携わっています。ささやかな働きにすぎないのですが、それでも7年、8年と時間を重ね、聖書との新たな出会いがあり、発見がありました。
本日は、この「聖書協会共同訳」翻訳事業の経過と、私が小さな体験を通して学んできたことを分かち合うことができればと思います。合わせて、先達の気概を引き継ぎ、次世代にも伝えられたらと願っております。
最初に翻訳の歴史を瞥見(べっけん)し、今回の翻訳事業がどのように位置づけられるか、したがって、どのような特徴を持つのかをお話しします。続いて、この作業を通して検討されたことを、単語のレベルから紹介します。さらに、近年の聖書学における方法論の認識――一般的に共時的な研究といわれる方法論を反映させた箇所や、新たな解釈から生まれた訳文を紹介します。(続く)
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飯謙氏は1955年生まれ。父親は日本基督教団の第9代総会議長の故・飯清氏(霊南坂教会牧師)。明治学院大学社会学部卒業後、同志社大学神学部、同大学院博士課程前・後期課程、スイス・バーゼル大学神学部で学ぶ。神戸女学院大学文学部教授。2009年、同大学長、18年、神戸女学院院長。専門はキリスト教学、旧約聖書学。
聖書事業懇談会は、情報交換の場として、聖書普及の現状を報告し、さまざまな立場からの意見や忠言を聞くため、2014年から毎年春に実施されている。「聖書協会共同訳」の翻訳者・編集委員の講演により、新しい翻訳が従来の邦訳とどう違うかを知ることができる。
次回の「新翻訳聖書セミナー・松山」は6月24日(日)午後2~4時、ひめぎんホール本館第6会議室(松山市道後2丁目5-1)で開かれる。翻訳者・編集委員の樋口進氏(夙川〔しゅくがわ〕学院院長・同短期大学特任教授)が「聖書協会共同訳の特徴について──礼拝にふさわしい聖書を目指して」と題して語る。定員120人の事前登録制だが、空席がある場合、当日参加が可能なので、問い合わせを。
問い合わせ:日本聖書協会広報担当
TEL:03-3567-1988
FAX:03-3567-4436
メール:(info@bible.or.jp)