礼拝のライブ配信をするには──始めるのは簡単、賛美歌の著作権は押さえて

 

オンライン礼拝は「簡単にできる」という声もあれば、「慎重に行う必要がある」という意見もある。その二つの側面は矛盾するように見えるが、実はどちらも本当だ。

今回の記事では、「出口」「入り口」「中身」の順番で考える。オンライン配信を検討するのであれば、まずは出口と入り口を先に決め、テストしてみよう。何ごとも「ものは試し」だ。

出口──動画をどのアプリで配信するか

現状で最も人気が高いアプリはユーチューブ、フェイスブック、ズームだろう。どのサービスも、メール・アドレスさえあれば、無料で動画配信が可能だ(ズームで40分以上のグループ通話を行う場合、月2000円の有料版へ切り替えが必要)。

まだユーチューブのアカウントを持っていなければ、まずはアカウントを取得しよう。ユーチューブは、スマホでの配信をするには1000人以上の登録者が必要なので注意が必要。ウェブカメラが搭載されたノートPCを使えば、ユーチューブでの配信も簡単に行うことができる。配信の方法については、公式ページに分かりやすく記載されている。

フェイスブックでのライブ配信の方法については、公式ホームページのQ&Aに方法が記載されている。アカウントを作成し、教会のグループを作成すれば、すぐに配信が行うことができる。

ズームでの配信は、ユーチューブやフェイスブックとは少し違う。ズームは「会議」を行うためのアプリなので、ユーチューブやフェイスブックのように情報を拡散させることを目的としてはおらず、基本的には、参加する人を個別に招待することになる(ただしユーチューブやフェイスブックも、公開範囲の設定を狭めることで、参加者を絞ることは可能)。

ズームでは、グループ会議の途中で、そのグループをさらに少人数のグループに分けることができる。日本バプテスト連盟・ふじみ野バプテスト教会(山下真実牧師、埼玉県)ではこの機能を使い、礼拝のあとに短い時間での少人数での近況報告や祈り合いの時間を持っているという。

ズームの使用については、「Zoom Lab」のホームページの説明が分かりやすい。

入り口──機材や設備の問題

最も手軽な方法は、スマホでの配信だ。ただユーチューブの場合、スマホよりノートPCのほうが向いているのは前述のとおり。

既存の音響機材や配信用カメラを使用してオンライン配信を行う方法については、工房ヒラムのブログに詳しい説明があるので、参照されたい。

日本福音ルーテル健軍教会(熊本市)の安井宣生(やすい・のぶお)牧師は、手軽さの面からスマホでの配信を行っているため、音声を聞こえやすくすることに悩んでいるという。「聖書朗読がよく聞こえるためには、朗読台の近くに置きたい。しかしそうすると、そこから離れている説教台での音声はクリアには届けられない」という問題が発生するからだ。ちなみに健軍教会ではイースター礼拝を中止し、その後、5月3日まで礼拝休止とした。

中身──著作権の問題

多くの教会にとって、礼拝には賛美歌がつきものだ。そこで問題になるのは、著作権の問題だろう。オンラインで配信する際には著作権に抵触しないよう気をつけなくてはいけない。賛美歌の多くには、それぞれの著作権が記載されている。教団ごとで管理しているところも多いので、それぞれの団体や個人に連絡し、配信に使用する許可を得よう。また、著作権の失効時期については、2018年末の改訂によって、権利者の死後70年以上とされていることにも注意したい。

日本基督教団「『讃美歌21』を使った礼拝の配信について

日本キリスト教団出版局「『讃美歌』(1954年版)の著作権について

日本バプテスト連盟「礼拝動画配信での『新生讃美歌』内賛美歌の使用について

もし著作権の保有団体がJASRAC(ジャスラック)になっていれば、あまり心配する必要はない。JASRAC広報窓口に問い合わせたところ、以下の条件を守ればJASRACに使用許可を取る必要はないことが分かった。

①動画配信にはユーチューブやフェイスブックなど、指定のサービスを使用すること(リスト全体はJASRAC公式サイトに掲載されている)

②商用利用をしないこと

③楽器の演奏ではなくCDをかける場合、CDの権利保持者に許可を得ること

基本的には①を守れば、礼拝の賛美によって著作権侵害の問題が起こることはないと言える。

②については、うっかりユーチューブなどでコマーシャルが入る設定にしないようにする必要がある。

③について、CDなどの音源には、曲を作った人が持つ著作権のほかに、演奏した人や団体が持つ著作隣接権というものがあるため、注意が必要だ。特に「ヒムプレーヤー」(教文館)を伴奏に使って賛美することについて不安に思う人の声が上がっている。教文館の窓口に問い合わせたところ、礼拝のオンライン配信でヒムプレーヤーを使用するための申請は不要だと思っていい旨、ご回答いただいた。ただ、(これは筆者の考えだが)たとえば配信を行う時に「賛美歌の音源はヒムプレーヤー(教文館)を使用」と記載するなどの配慮は必要だろう。

教会によっては、「ワーシップソング」と言われる現代賛美を取り入れているところもあるだろう。ワーシップソングを生み出しているレーベルの中でも有名なヒルソングは、「新型コロナ・ウイルスが流行してから特別な対応を取っている」と回答した。フェイスブックおよびユーチューブでのライブ配信や、事前に録画した動画の配信に限り、CDの楽曲自体を流すことを含め、ヒルソングの楽曲はすべて申請なしで演奏・使用することができる。ユーチューブであれば、自動で配信が停止されることはないため、ユーチューブでの使用が勧められている。ただし、フェイスブックおよびユーチューブ以外での使用を予定しているのであれば、個別に連絡を取る必要がある。連絡先はこちら(digitaldelivery@hillsong.com、英語での連絡が必要)。日本語に翻訳された楽曲については、ヒルソング東京支部に連絡することをお勧めする(tokyo@hillsong.com)。

また映像を流す際には、映り込む人の肖像権にも配慮しよう。信徒の後ろ姿など、顔が映らなければ基本的に肖像権に抵触するおそれはないが、奏楽担当者が映る場合などには本人の了承を得る必要がある。

また、上記のオンライン・ツールのノウハウを含めた新型コロナ・ウイルス対策サイトが有志により立ち上げられている。興味のある方は一度、訪問してみることをお勧めする。

まとめ

オンライン配信をすることは簡単だが、賛美歌などの著作権などがややこしい。言い換えれば、手間はかからないが、正しく情報を理解する必要があるということだ。「面倒くさそう」と食わず嫌いになってしまう気持ちも分かるが、これも新しい手法を試す伝道のためのチャンスだと思って、どんどんチャレンジしていこう。

原口 建

原口 建

バプテスト派。オーストリア・カナダに留学経験を持つ。大学の専攻は仏文学。

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