インターネットを活用した福音宣教と弟子訓練を行うハーベスト・タイム・ミニストリーズ(以下、ハーベスト・タイム)。その働きについて、代表を務める中川健一氏にハーベスト・センター(静岡県裾野市)で話を聞いた。
24年間続けてきたテレビ番組「ハーベスト・タイム」を終了し、8年前にインターネットに活動の場を移した。「これからは、ネットのほうがより多くの人に福音を届けられる」と判断したからだ。テレビとは異なり、インターネットなら時間や場所を選ばず、好きな時に聖書のメッセージに触れることができる。また、さまざまなコンテンツを無料で提供できることも大きかった。
ハーベスト・タイムのサイトの大黒柱は、現代に生きる人々に必要な聖書のメッセージを音声と動画で届ける「メッセージ・ステーション」。その中でも中心となっているのが、中川氏の語る聖書講解メッセージ(約60分)だ。これまでに、マタイによる福音書や創世記、ヨハネの黙示録など、508タイトルのメッセージが無料で公開されている。さらに、未信者やクリスチャンになったばかりの人のためのサイト「聖書入門.com」では、キリスト教についてよくある質問に答える「3分でわかる!聖書」などがあり、トータルで1000本を超える音声・動画が公開されている。
「メッセージ・ステーション」は現在、月間約40万件を超えるアクセスがある。その人気の理由として、次の二つが考えられる。まず、「聖書講解」に徹していること。聖書講解は聞くのに集中力が必要だが、聖書を理解できた時の喜びは、証しを聞いて感動することより大きく、また信仰が成長する力となる。さらに、聖書そのものの話だから、飽きることもない。
「日本のクリスチャンの弱いところは、聖書の意味を深く理解していないところにあります。そのため、私たちが大切にしているのは、聖書を比喩的に読むのではなく、『字義どおりに読む』ということ。つまり、常に文脈を意識しながら、書いてあるとおりに聖書を読むということです。5000人のパンの奇跡でも、イエス様は本当にパンを分けたのに、少年に促されて、みんなで持っている弁当を分けたと解釈をする人もいます。そうではなく、書かれているとおりに読むことが大事なのです」
人気の理由の2番目は、聖書をヘブル的視点で読むということ。「聖書はユダヤ文化という文脈の中で書かれているため、日本人に引きつけて読むと、どうしても分からないことが多い。当時の風俗、習慣、言語、ユダヤ人が何をどう感じたのかを理解した上で解釈して初めて、今の自分に適用できるのです」と中川氏。
「たとえば、『神様はヤコブを愛し、エサウを憎んだ』という言葉を当時のユダヤ人はどう理解したかというと、『神様はAを選んで、Bを選ばなかった』という意味なんですね。だから、『憎む』という日本語で解釈すると、的外れな意味になってしまいます。当時のユダヤ人がこの言葉をどう使ったのかを考えることで、正しい解釈ができるようになるのです。実際、メッセージを聞いた人から、『目から鱗(うろこ)が落ちた』『本当の意味が分かった』という反響が多く寄せられています」
ハーベスト・タイムのホームページへのアクセスは152カ国に及ぶ。海外にも、日本人クリスチャンが数名いるのに牧師がいないということがある。そんな時、信徒が自主的にグループを作り、ネットでメッセージを聞いて、聖書の勉強をしたり、礼拝をしたりすることにも用いられているという。また、ネットなら誰にも気兼ねせずに見ることができるので、人知れず悩んでいる人にも大きな救いとなっている。
「未信者の方が聖書について検索をしていて、ハーベスト・タイムのサイトを偶然見つけ、聖書のメッセージを何百本も聞いているというケースもあります。そうした方が教会に来る時には、すでに救いの教理から終末論までを理解しているのです。驚くべきことです。また、最近ではホームページを通さず、ユーチューブで見る人も増えてきています。
この働きは、最初からトータル・デザインがあってやったわけではありません。やっているうちにいろいろな声が伝わってきて、その都度修正したり、やり直したりしながら今のかたちになりました。神様の言葉は、私たちの理解を超えたところで働き、そして広がっていきます。ですから、今後もとどまることなくこの働きは広がっていくと思っています」