洗礼者ヨハネの首を願ったサロメから、聖母マリアまで「ギュスターヴ・モロー展──サロメと宿命の女たち」パナソニック汐留美術館で

 

「ギュスターヴ・モロー展──サロメと宿命の女たち」(主催:パナソニック汐留美術館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社)がパナソニック汐留美術館(東京都港区)で6日から開催されている。6月23日まで。

「出現」(1876年頃、油彩/キャンバス、142×103センチ、ギュスターヴ・モロー美術館蔵) Photo©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

洗礼者ヨハネの首の幻影がサロメの前に現れる「出現」など、聖書やギリシア神話を題材として多様な女性を描いた、フランス象徴主義を代表する画家、ギュスターヴ・モロー(1826〜98年)。パリにあるギュスターヴ・モロー美術館の所蔵品が並ぶ今回の展覧会では、油彩や水彩、素描などから、その芸術の創造の原点に迫る。

同展は4章構成となっており、第1章「モローが愛した女たち」では、母や恋人を描いた初来日作品や手紙などが紹介される。謎(なぞ)に包まれたその実生活において実際に関係があった女性たちに光が当てられ、モローの素顔の一端を垣間見ることができる。

第2章「『出現』とサロメ」では、モローが描いた「サロメ」のさまざまな側面を取り上げ、この主題に魅せられたモローがどのようにイメージを膨らませたのか、その背景をたどる。モローは1870年頃より、洗礼者ヨハネの首を褒美(ほうび)として求めたサロメを描き始めている(マルコ6:14~29。聖書では「ヘロディアの娘」とあるだけだが、ヨセフス『ユダヤ古代誌』に「サロメ」と記されている)。

第3章「宿命の女たち」では、「サムソンとデリラ」「エヴァ」など、聖書や神話の登場人物を描いた作品が並ぶ。モローは女性の本質を、悪に翻弄される宿命を背負った存在ととらえる。そうした隠された観念といった精神世界が表現されているからこそ、作品の中の女性が一段と輝いて見えるのかもしれない。

「一角獣」(1885年頃、油彩/キャンバス、78×40センチ、ギュスターヴ・モロー美術館蔵)Photo©RMN-Grand Palais / Christian Jean / distributed by AMF

最後の第4章「『一角獣』と純潔の乙女」では、一見、悪とは無縁な女性が描かれている。ただ、その汚れなき清らかさゆえに男性を魅了し、その運命を狂わせてしまうという、女性に潜む残酷な美しさに注目したい。特に「一角獣」は、モロー独特の輝く色彩と繊細なタッチで描かれた代表作だ。また、聖母マリアが主題となった晩年の作品「神秘の花」など、見どころは多い。

パナソニック汐留美術館学芸員の萩原敦子さん

同美術館学芸員の萩原敦子(はぎわら・あつこ)さんは次のように話す。

「第1章で見られるように、モローは母親のことを『まるで修道女で、穏やかで高貴な女性だった』と述べています。母親もモローをとても大切にし、彼の生活全般を世話していたと言われます。母親に支配されていたとまではいかないにしても、モローにとって母親は無視できない大きな存在であったことは間違いありません。これは想像の域を出ませんが、第1章の身近な女性たちと、第4章の清らかな聖なる女性はつながるところがあるのではないでしょうか」

同展は、あべのハルカス美術館7月13日(土)〜9月23日(月・祝)、福岡市美術館10月1日(火)〜11月24日(日)に巡回する。※出品作品は会場により一部異なる。

開館時間は、午前10時〜午後6時(※入館は閉館の30分前まで)。休館日は、水曜日(ただし、5月1日、6月5日、12日、19日は開館)。料金は、一般1000円、65歳以上900円、大学生700円、中学・高校生500円、小学生以下無料。※20人以上の団体は100円割引。※障がい者手帳所持者と介護者1人は無料。※5月18日は国際博物館の日で入館無料。詳しくは同展ホームページを。

※「ギュスターヴ・モロー展──サロメと宿命の女たち」のペア入場券をプレゼントします。応募締め切りは4月28日(日)まで。応募は、ご住所とお名前、所属教会名を明記の上、ホームページのいちばん下にある「お問い合わせ」からメールをお送りください。当選者発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。当選に関するお問い合わせにはお答えすることができません。

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