英国のエリザベス女王(95)は25日、国民に向けて恒例のクリスマスメッセージ動画を公開した。女王は、今年4月に亡くなった夫エディンバラ公フィリップ殿下を追悼し、「愛する人を失った人間にとって、クリスマスはつらい時にもなり得ます。それがどうしてなのか、今年の私は特によく分かります」と述べ、新型コロナウイルスの感染拡大で家族を亡くした人々の気持ちに寄り添った。BBCニュースなどが報じた。
動画は、ウィンザー城で収録され、女王の横には、結婚60周年を迎えた2007年に2人で撮った写真が置かれ、女王の胸元には、ハネムーンと60周年の際にも身に着けたサファイアのブローチが着けられていた。エディンバラ公爵を「最愛の」と呼び、「あの茶目っ気あふれる、好奇心に満ちたきらめきは、初対面の時から最後の時まで変わらずまぶしく輝き続けました」と語った。
続けて「人生とはもちろん、たくさんの出会いだけでなく、いくつもの最後のお別れによって成り立っているものです」と述べ、「私も家族も、夫がいなくてとても寂しいですが、私たちにクリスマスを楽しんでほしいと、彼ならそう思うはずです」と話した。
女王はフィリップ殿下が「バトンを渡す」ことを常に意識していたことを明かし、クリスマスの伝統や自分たちの価値観を次世代に継承することの重要性を繰り返し伝えた。さらに、環境問題に早くから取り組んだフィリップ殿下の仕事を、長男チャールズ皇太子とその長男ウィリアム王子が継承していることにも触れ、「言葉にならないほど誇りに思っています」とたたえた。
また、在位70周年を祝う「プラチナ・ジュビリー」の1年となることについて、「あらゆる場所の人が一体感を味わえる機会になるよう願っています」と期待感を示した。
最後に、イエス・キリストの生誕を祝う賛美歌「ああベツレヘムよ」の歌詞にある「積年の希望と恐れはすべて今宵 あなたの中に集う」という部分を引用し、「どうぞ皆さん、とても楽しいをクリスマスをお過ごしください」と締めくくった。
BBCのニコラス・ウィッチェル王室担当編集委員は、今回のクリスマスメッセージは例年になく女王自身の個人的な思いをあらわにした内容だったと分析。「73年間の伴侶だった相手を失って、深い喪失の思いを抱いているという印象を受けた」と述べている。