長崎県・五島列島最大の福江島の南部にある黒蔵(くろぞう)集落。1797年に長崎・外海の潜伏キリシタンが移住した3集落の一つだ。同地区に住む潜伏キリシタンの子孫が「キリスト誕生の馬小屋」模型(イタリア語でプレゼピオ)と思われる木箱を保管していた。大浦天主堂「キリシタン博物館」(長崎市)が5日、「当時の具体的な信仰形態が分かる貴重な資料」として発表した。観音像を聖母マリアに見立てた例はあるが、複数の像を配置して一つの場面を表す馬小屋模型は類例がなく、そのため異論もある。
平山勇市さん(64)が十数年前、同地区に住む知人から木箱一式を譲り受け、自宅で保管していた。木箱は横幅が48・2センチ、高さが27・4センチ、奥行きが27・5センチ。その中には、ホラ貝から山伏が顔を出す根付(ねつけ)や如来像、役行者(えんのぎょうじゃ)像、三つの金属の棒状の像などが収められている。
平山さんが所蔵している文書の中に、「日繰り」と呼ばれる教会暦の帳面や、「おんたいやのおらしょ」(クリスマス・イブの祈り)、「おんうまれなされた所」(ご誕生の晩の祈り)、「三人のていをう」(東方の三博士)という言葉、また五島で信仰具とされてきたアワビの殻があったことから、同館はこれを「馬小屋」と判断した。中央手前にあるホラ貝の根付は布にくるまれたキリスト、奥の役行者像は父ヨセフか神、その手前の小さい如来像は母マリア、右の三つの金属の像はキリストに贈り物をささげる「東方の三博士」とみられる。像の特徴から江戸時代の作という。
木箱など一式は8月11日~9月26日、同館で開く初めての企画展「復活の島・五島列島 潜伏キリシタンの信仰と歴史」で公開している。