クリスチャンでもクリスチャンじゃなくてもみんな大好きなクリスマス。その意味や背景について「そもそも」から掘り下げるこの企画、前回はクリスマス三大ワードについてお話ししましたが、今回は日本のクリスマス事情とか、日本人におなじみのクリスマスモチーフについてお話ししようと思います。よろしくおつきあいくださいませ。
クリスマスはキリスト教のお祭りです。一方で日本にクリスチャンは1.1%しかいません(宗教年鑑2020)。そんな日本でこれほど盛大にクリスマスイベントが行われるようになったのはどうしてでしょう。
日本のクリスマスの始まりと発展
日本で最初のクリスマスが行われたのはザビエルが日本にやってきてからしばらく経った16世紀の中頃、宣教師たちが日本人信徒と一緒に行ったのが初めだと言われています。その後、弾圧の時代が続きますから江戸時代の間はほとんど行われることはなかったそうですが、時代が明治に変わると再び西洋文化が日本に流入してきたのと同時に、クリスマスもまたその文化の一部として少しずつ浸透しました。俳人正岡子規はいくつかクリスマスを季語とした俳句を詠んでいます。「クリスマス」が五文字なので俳句の季語として使いやすかったようです。
1927年から1947年の間は、12月25日が大正天皇祭(先帝祭)として休日とされたので、たまたまではありますがクリスマスが日本でも休日となりました。これにともなってクリスマスの認知はより加速し、様々な催しも行われるようになりました。戦時中に「敵国の祭」であったクリスマスが休日だったというのは意外ですよね。
クリスマスが日本に広まる背景はこれまでに書いたようなことですが、その原動力となったのは商業で、1900年頃に銀座の明治屋がクリスマスイベントを始めました。これがいわゆる「クリスマス商戦」の元祖です。商業が目的である故に、日本のクリスマスは宗教色をできるだけ抑えるようになり、イエス・キリストよりもサンタクロースを強調するものになっていきました。高度成長期やバブル時代の、いわゆる「接待をともなう飲食店」も、クリスマスをきらびやかにするきっかけとなったそうです。
サンタクロースって誰?
日本では、クリスマスの主役といえばイエス・キリストではなく、サンタクロースです。これには眉をひそめるクリスチャンも少なくありませんが、実情として世間一般でそういう認識になっているのは疑う余地がないでしょう。しかし、サンタクロースって誰?と尋ねたら、ちゃんと答えられる人は意外といません。
聖書にはサンタクロースについての記述はまったくありません。「いい子にしていればプレゼントをもらえる」という記述もありません。むしろ聖書のメッセージは「いい子にも悪い子にも、神様はプレゼントをくれる」です。「いい子にはいい報い、悪い子には悪い報い」といういわゆる因果応報の考え方は、聖書ではしないんです。
サンタクロースのモデルになったのは4世紀頃に生きた聖ニコラオスという人物だとされています(諸説あり)。ある時、娘を売らなければ生きていけないほどに貧しい一家がいました。それを不憫(ふびん)に思ったニコラオスは、その家の窓から金貨を投げ入れました。金貨は部屋の中に掛けられていた靴下の中に入り、そのお金でその家の娘さんは売られずにすみました。他にもいろいろな伝承があるのですが、この伝説がサンタクロースの起源の一つだとされています。それで今でも靴下がクリスマスプレゼントの重要キーワードになっているんです。
ニコラオスはこのエピソードだけでなく、偉大な教父でもあったので死後、聖人とされました。「聖ニコラウス」の「聖」は「サンタ」と読みますから、「サンタ・ニコラウス」から「サンタクロース」と呼ばれるようになったんです。そんなわけですから、この人を「サンタさん」と呼ぶのは「聖さん」と呼んでいるのと同じで、ちょっと奇妙なことなんです。「聖ペテロ」も「聖パウロ」も、「聖」のつく人はみんなサンタさんということになってしまいます。
日本ではこのサンタクロースというキャラクターをシンプルに「みんなにプレゼントをくれる人」と捉え、商業的マスコットとして広めました。商業的には「貧しい者は幸いです」なんて言うイエス様はむしろ邪魔ですから、「サンタがクリスマスの主役」ということになっていったわけです。
ちなみに、サンタが赤い服をきているのはコカ・コーラの宣伝のため、という話がありますが、どうやらこれは半分本当で半分ウソです。コカ・コーラがサンタクロースを広告キャラクターとして初めて使ったのは1931年ですが、その前からサンタが赤い服を着るというイメージはそれなりに定着していました。とはいえ、まだ今のようにまでは定着しておらず、緑の服、灰色の服を着たサンタもいたのですが、コカ・コーラの広告が決定だとなって、一気に「サンタ=赤」というイメージが定着したのだそうです。
クリスマスツリー
日本でクリスマスと言えば、サンタクロースの次にイメージされるのがクリスマスツリーでしょう。モミの木を使うのが一般的ですが、特にモミの木でなければいけないと決まっているわけではなく、冬でも緑を保っている常用樹であればなんでもいいようです。
聖書にはクリスマスツリーの根拠になるような記述はありません。どうも古代ゲルマン神話で生命の象徴とされていた「ユール」という樹が、長い歴史のなかでクリスマスと融合してクリスマスツリーに変化したようです。昔はあちこちの国や宗教で冬至を祝う風習がありましたから、冬至のお祭りでは文化が混同しやすかったのかもしれません。
一説にはこの木のモデルは、創世記でアダムとイブが食べてしまった「禁断の樹」だとも言われています。どうして聖なる日に、そんな罪の象徴のようなものを飾るのか、と疑問に思いますが、どうやら中世ではクリスマスの降誕劇をやるときには除幕としてアダムとイブのエピソードも演じるのが定番だったようで、その舞台装置として飾られたのが起源のようです。あくまで一説ですが。
しかしクリスマスツリーが広く飾られるようになったのは、西洋でも19世紀頃からのことで、比較的新しい文化だと言えます。日本でも同じ頃、1860年にプロイセン王国の公館に飾られたのが最初だと言われています。その後、1900年に銀座の明治屋がクリスマスツリーを飾ると、銀座近辺でこれが流行しました。日本のクリスマスツリー文化は銀座から始まったと言えるんです。
クリスマスは教会へ!
さて、これまでクリスマスにまつわる知識をいくらか紹介してきましたが、やはりクリスマスを味わうなら教会が一番です。この時期はどこの教会も一年で一番盛り上がる時期ですし、楽しいイベントも多いですから「初めて教会に行くには勇気が要るな・・・」と思っている方でも訪れやすいです。もちろん一年を通じて教会はいつでも、来る人を歓迎しますがそれでもやっぱりクリスマスは格別です。ですから興味をお持ちの方、今年のクリスマスはいつもと一味違った本格的な日にしたいという方は、ぜひ教会を訪れてみて下さい。ただ、残念ながら先にも少し書きましたが今年は新型コロナウイルスの流行によりクリスマスイベントの中止や縮小を余儀なくされている教会も少なくないですし、受入制限をせざるを得ない教会も多いですから、お手数で申し訳ないのですが事前にお近くの教会に電話やメールなどで連絡を入れてからお出かけになるのがよろしいかと思います。教会によってはオンラインイベントを開催する場合もあるようです。
教会はクリスチャンだけのものではありません。すべての人のためにあるものです。そしてクリスマスもクリスチャンだけのものではありません。イエス・キリストはあらゆる人を救うために地上に降誕しました。そのことを祝う日がクリスマスなのですから、クリスマスもまた、生きとし生きるあらゆる人のための日なんです。ですから「クリスチャンじゃないし・・・」なんて気後れする必要はまったくありません。堂々と胸を張って、思いっきりクリスマスを満喫して下さい。
さて、ここまで一緒に「クリスマスそもそも」をお送りしてきましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。
皆さま素敵なクリスマスをお過ごしくださいね。なんやかんや言っても「イエスさまの誕生日会」ですから。誕生日会はみんなが楽しんでくれることが祝われる側だって一番嬉しいものです。
それではまたいずれ。
MAROでした。