6月27日、東京拘置所の白石隆浩さんに死刑が執行されたことに対し、日本カトリック司教協議会 社会司教委員会(森山信三委員長)は7月7日、石破茂首相と鈴木馨祐法務相に宛てて抗議声明を発出した。
声明は、「たとえ犯罪者であっても、神のたまものであるいのちを生きるという不可侵の権利をもっている」という教皇フランシスコの発言を引用し、死刑は人格の不可侵性と尊厳への攻撃だと主張。白石さんについては、「その罪の重さに気づき、生涯をかけてその責任を負うべき」であったとし、日本政府がそのいのちを奪ったことは、「彼が改心し、更生する機会も、遺族に償い、事件で受けた心の傷に深く報いる機会をも、奪ったということ」だと強調した。最後に、2019年の事件で亡くなった9人の被害者を追悼し、今なお苦しむ遺族と関係者の心の安らぎを祈った。
声明の全文は以下の通り。
内閣総理大臣 石破 茂 様
法務大臣 鈴木馨祐 様
2025年6月27日の死刑執行についての抗議声明
2025年6月27日、東京拘置所の白石隆浩さん(34歳)に死刑が執行されました。私たち日本カトリック司教協議会 社会司教委員会は、「すべてのいのちの尊厳」を守る立場から、死刑制度に反対し、今回の執行に強く抗議します。
私たちが死刑に反対するのは、なによりもまず、「たとえ犯罪者であっても、神のたまものであるいのちを生きるという不可侵の権利をもっている」(教皇フランシスコ、2016年2月21日)と考えるからです。それゆえ、私たちは死刑を許容できません。それは、人格の不可侵性と尊厳への攻撃なのです。
私たちのこうした死刑反対の立場は、国連が2007年以来、2024年12月の総会までに、10回にわたって死刑の執行停止を求める国連決議を採択するなど、死刑は人権の核心である生命権を剥奪する残酷な刑罰であるとする理解が、世界的に広がっていることにもつながるものです。そして日本国内でも、昨年2024年10月の袴田巌さんの無罪確定を契機に、死刑制度の不条理性への関心が、ようやく広がってきています。
ところが今回の執行は、2022年7月26日以来、日本で3年間にわたる無執行(モラトリアム)が実現されようとする直前、これを破るように行われました。また冤罪による死刑執行を回避するために重要な、再審制度についての理解が与野党議員間で深まり、去る6月28日にはその見直しの法案が野党から国会に提出された矢先でもありました。したがってこれは、世界の死刑廃止の流れに逆らったかのような執行だったのであり、看過できることではありません。
白石隆浩さんは、2019年、神奈川県座間市で9名の男女を殺害するという凶悪な犯罪を犯しました。本来ならば彼は、その罪の重さに気づき、生涯をかけてその責任を負うべきでした。しかし日本政府は、その時の到来を待たずに彼のいのちを奪いました。それは、彼が改心し、更生する機会も、遺族に償い、事件で受けた心の傷に深く報いる機会をも、奪ったということでもあります。
私たちは、2019年の事件で亡くなられた9名の被害者の方々を追悼し、事件によって深く傷つき、今もなお苦しまれる遺族、関係者の方々の心の安らぎを祈ります。そして、この度、加害者として死刑に処せられた白石隆浩さんを深く心に留め、日本政府が死刑制度を見直し、その廃止にむけて迅速に取り組むことを求めます。
2025年7月7日
日本カトリック司教協議会 社会司教委員会
委員長 森山信三司教
Kakidai – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=73932941による