司教協議会会長 菊地功枢機卿が国内のカトリック教会へメッセージ「力強い牧者を失う大きな痛手」

日本カトリック司教協議会会長の菊地功枢機卿(カトリック東京教区大司教)は4月21日、教皇フランシスコの訃報を受けて国内のカトリック教会に属する信徒らに向けてメッセージを発した。

教皇の来歴を振り返る中で菊地枢機卿は、「教会のシノドス性について、司教だけではなく、教会全体の声に耳を傾けるために、2021年から始まり2024年までの時間をかけて、教会全体がシノドス的な教会となる道を歩むように導」いたこと、2019年の訪日では、「世界に向けて核兵器廃絶による平和の確立と、すべてのいのちを守ることの重要性を力強く発信」したことに触れ、「日本の教会にとって、まさしく、わたしたちの牧者の存在を肌で感じる体験」であり「教皇様の声に直接触れ、霊的に燃え上がってい」たと述懐した。

日本の司教団としては、2015年と2024年に使徒座定期訪問(アドリミナ)でローマを訪れ、直接意見を交換する機会があり、「このときに体験した、権威に基づいて命じるのではなく、耳を傾けともに歩もうとする」姿勢に、多くを学んだと回顧。

2020年以降の世界的な感染症によるいのちの危機や、頻発する戦争や武力紛争の現実に対して、「希望の巡礼者」を2025年聖年のテーマとして掲げ、「ともに助け合いながら歩むことで教会が世界に対して、キリストにおける希望をあかしする存在となるように求め」る最中、「力強い牧者を失うことは、教会にとって大きな痛手」と教皇の逝去を惜しんだ。

全文は以下の通り。


日本のカトリック教会の皆様

教皇フランシスコの逝去に際して

敬愛する牧者であった教皇フランシスコは、ローマ現地時間4月21日7時35分(日本時間4月21日14時35分)、88年にわたる人生の旅路を終え、御父のもとへと旅立たれました。わたしたちは愛といつくしみに満ちた力強い牧者を失いました。

初めての南米出身の教皇として、2013年から十年以上にわたり、これまで手をつけられることのなかったバチカンの機構改革や、第二バチカン公会議の成果を踏まえた教会のシノドス性の推進など、力強く教会を導かれた教皇フランシスコの逝去に際して、深い悲しみのうちに、わたしたちの希望の源である御父のもとでの永遠の安息を心よりお祈りいたします。

1936年12月にホルヘ・マリオ・ベルゴリオとしてアルゼンチンで誕生された教皇フランシスコは、イエズス会員として、1969年に司祭に叙階されました。叙階後はイエズス会の養成指導者として、修練長や神学院院長などを務め、1973年から6年間は、イエズス会アルゼンチン管区長を務められました。

1992年5月20日、教皇ヨハネ・パウロ二世からブエノスアイレス補佐司教に任命され、同年6月27日に司教叙階、1997年6月3日にブエノスアイレス協働大司教となり、1998年2月28日から同教区大司教となりました。2001年2月21日には教皇ヨハネ・パウロ二世から枢機卿に叙任され、2005年から2011年までの6年間は、アルゼンチン司教協議会会長も務められました。

ベネディクト16世の引退を受けて行われたコンクラーベ(教皇選挙)において第266代教皇に選出された教皇フランシスコは、イエズス会会員として初めての教皇であり、七十六歳という年齢で選出されたにもかかわらず、力強く明確なリーダーシップをもって、第二バチカン公会議が目指した教会の改革を徹底することを目指されました。

2013年11月には使徒的勧告「福音の喜び」を発表され、誰ひとりとして排除されない喜びに満ちあふれた教会の姿を目指す姿勢を明確に打ち出されました。その後、2015年5月には、回勅「ラウダート・シ」を発表され、共通の家である地球を守るために全世界の人々と協力しながら取り組むべき課題を明確にし、教会の進むべき方向性を示されました。

さらには第十六回世界代表司教会議(シノドス)を招集され、教会のシノドス性について、司教だけではなく、教会全体の声に耳を傾けるために、2021年から始まり2024年までの時間をかけて、教会全体がシノドス的な教会となる道を歩むように導かれました。互いに耳を傾け、誰も排除することなく、互いに支え合い、祈り合いながら、聖霊の導きを識別する教会は、これからの教会共同体の姿の指針です。

教皇フランシスコは2019年に訪日され、長崎、広島、東京において多くの方々と出会う中で、世界に向けて核兵器廃絶による平和の確立と、すべてのいのちを守ることの重要性を力強く発信されました。日本の教会にとって、まさしく、わたしたちの牧者の存在を肌で感じる体験でした。あのときわたしたちは、教皇様の声に直接触れ、霊的に燃え上がっていました。

日本の司教団は、2015年と2024年の二度にわたり使徒座定期訪問(アドリミナ)でローマを訪れ、教皇フランシスコと直接意見を交換する機会をいただきました。このときに体験した、権威に基づいて命じるのではなく、耳を傾けともに歩もうとする教皇フランシスコの姿勢に、わたしたちは多くを学びました。

2020年以降の世界的な感染症によるいのちの危機や、頻発する戦争や武力紛争は、世界から寛容さを奪い去り、暴力や絶望が力を持つようになりました。その現実に対して教皇フランシスコは、2025年聖年のテーマとして「希望の巡礼者」を掲げ、ともに助け合いながら歩むことで教会が世界に対して、キリストにおける希望をあかしする存在となるように求められました。

まさしく聖年の歩みを続けているこのときに、力強い牧者を失うことは、教会にとって大きな痛手です。

教皇フランシスコの逝去にあたり、これまでの長年にわたる教会への貢献と牧者としての導きに感謝し、御父の懐にあって豊かな報いをうけられますように、永遠の安息を共にお祈りいたしましょう。

2025年4月21日
日本カトリック司教協議会 会長
カトリック東京大司教区 大司教
枢機卿 菊地功

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