日本で初めての本格的なドラマ仕立てのオーディオ・ブック聖書アプリ「聴くドラマ聖書」の無料ダウンロードが18日から始まった(スマホのApp StoreかGoogle Playストアから)。同アプリを制作した日本G&M文化財団は記者会見をGINZA SIX「ザ・グラン銀座」(東京都中央区)で開き、その中で出演者への囲み取材があった。その後、日本のキリスト教界の代表者など100人あまりが招待され、完成披露パーティーも開催された。
今回取材の応じたのは、父なる神の声を演じた大和田伸也(おおわだ・しんや)さん、福音書記者マタイを演じたつるの剛士(つるの・たけし)さん、創世記の父祖ヤコブを演じた六平直政(むさか・なおまさ)さん。
──出演依頼が来たとき、どう思われましたか。また、どのように役作りをされたのでしょうか。
大和田:「聖書」は世界的大ベストセラーで、演じるのは神の役。父が敬虔(けいけん)なクリスチャンだったので、私のような人間が神をやっていいのか大いに悩みましたが、自分が持っている低音が役に立つならと思いました。
神を表現するにあたっては、「人間の世界ではなくて、もう少し崇高(すうこう)なところから喋(しゃべ)らなくてはいけない」とか、「人間でなく神はどうなんだろう」という気持ちを掘り起こして演じるようにしていました。
六平:私は浄土真宗のお寺に生まれたので、「聖書の中の人物を演じてもいいのかな」とためらいがありましたが、「天で神様はつながっているはずだ」と思い、引き受けました。これまで聖書を読んだことがなかったので、創世記のヤコブがどういう人かも分かりませんでした。資料も台本だけだったので、自分で想像しながら演じました。ただ、録音前にはG&Mの会長が祈ってくれたので、気持ちが清くなっていく気がしました。
つるの:僕はクリスチャンで、小さい頃から教会に通い、聖書にも親しんできたので、「あの徴税人で、イエスの弟子になり、後に福音書記者になったマタイを演じられるのか」と緊張しました。始まってからも、マタイがどんなキャラクターなのか、悩みながら録音にあたっていました。それから、聖書は分厚く、見かけることはあっても手に取ることはあまりないと思うので、大人も子どももこの機会に聖書に触れてほしいと思います。
──印象に残ったシーンを教えてください。
大和田:「人間はこうあるべきなんだ」と毎日教えられながら過ごしていたので、どのシーンも心に刻まれています。映画の「十戒」は見ましたけれど、あれは神でなくてモーセの視点なんですね。今回初めて聖書を読み通し、「旧約聖書はこういうものなんだ」とものすごく勉強になりました。神は俯瞰(ふかん)で人間を見ているようだけれど、グイグイ心に入っていくんですね。そういうところを表現するのが面白く、そこがものすごくやりがいがありました。
六平:ヤコブの家族や同胞に対する愛の深さがすごいと思いました。いま「絆(きずな)」という言葉がよく聞かれますが、聖書にはすでに「絆」が描かれていて、新しい書物と言ってもおかしくないと思います。
つるの:すべて印象に残っていますね。小さい頃に教会で歌った賛美歌が、ここの聖書の言葉がメロディーになっていたのかと気づかされることもあって、新たな発見を得ることができました。こういうふうに音声になると、立体的に聖書を捉えることができるので、とてもいいですね。
──心に残っている聖書の言葉はありますか。
大和田:たくさんあります。その一つが「光あれ」です。相変わらず争いごとの絶えない現代、その中にいる人に「光あれ」と言いたいし、災害にあわれた方にも、病気で苦しまれている人にも「光あれ」と本当に思います。
つるの:「赦(ゆる)し」です。どんなことがあっても赦していく。それが良い時代につながっていく。そういう普遍的なメッセージが聖書の中にずっと紬(つむ)ぎ出されているので、そこのところを皆さんに感じてほしいと思いました。今回やっていて思ったのは、神はいろいろなことを赦してくださっているということで、その上で一人ひとりに使命を与えているのだなということを感じ、神様の懐(ふところ)の限りない広さを思いました。
六平:言葉ではありませんが、ヤコブを演じて感じ取った「絆(きずな)」ということです。
──特にどんな人に聞いてほしいですか。
大和田:こういう考え方もあるということを、若い人に聞いて分かってもらいたい。また、壮年世代にも手軽に聞いてほしい。両方の世代に楽しみながら聞いていただきたい。
つるの:子どもたちも含め、これまで聖書に触れる機会がなかった人はもちろんですが、改めてクリスチャンの方にも聞いてほしいです。僕自身、「こういうことが書かれていたのか」と改めて再認識する素晴らしい機会を与えられたので、昔から聖書に触れている人にも聞いていただきたいと思います。
六平:小・中学校の道徳の時間に流すのはいいかなと。無理やり聞かせるのではなく、BGMのように流しておいたらいいのではないでしょうか。
このあと開催された完成披露パーティーには約100人が集まった。その中で、グローバルG&Mグループ会長のビル・ファンさんは次のように挨拶(あいさつ)した。
「私の人生の最初の45年間、聖書を通読しようと努力はしてみても、結局1度だけ通読するのがやっとでした。しかし、米国で英語版のドラマ・バイブルに出会った後の10年間では、10回も通読することができました。
ほとんどすべてのクリスチャンは『聖書を読みたい』と望んでいます。しかし、それをなかなか実現できないのは、意志や努力ではなく方法の問題です。その方法としてドラマ・バイブルは非常に有用であり、またウォール街で働いていた30年にわたり日本から多大な恩恵を受けた私にとって、日本語でのドラマ・バイブルの実現は最優先事項でした。しかし、ここまで早く実現するとは思いませんでした。制作に関わってくださったあらゆる方と、そして神様に感謝します。
福音の種をまく者がいて、種に水をまく者もいる。しかし、種が育つのはひとえに神の恩寵(おんちょう)によります。そして、神様のパワーを得た者の成長は決して止まることがありません。このドラマ・バイブルにより、日本中に福音の種と神の恩寵が広がりますように」