4月2日は高村光太郎の命日です。
キリスト教に心をひかれて植村正久の家を訪ねたりした。しかしどうしても宗徒となることが出来ず、心を痛めながら青年の彷徨(ほうこう)をひとりで重ねてゐた。(「父との関係」)
「クリスマスの夜」という詩の一部を紹介します。
「わたしはマントにくるまって
冬の夜の郊外の空気に身うちを洗ひ
今日生まれたといふ人の事を心に描いて
思はず胸を張ってみぶるひした
(中略)
此世で一番大切なものを一番むきに求めた人
人間の弱さを知り抜いていた人
人間の強くなり得る道を知っていた人
彼は自分のからだでその道を示した
天の火、彼──彼の言葉は痛いところに皆触れる
けれども人に寛濶(かんかつ)な自由と天真とを得させる
おのれを損ねずに伸びさせる
彼は今でもそこらに居るが
いつでもまぶしい程初めてだ(中略)
今でも此世には十字架が待っている
それを避けるものは死ぬ
わたしも行こう
彼の誕生を喜び感謝するものがここにも居る
(後略)」