今日4月19日は大中寅二(おおなか・とらじ)の召天日。
1896年、東京に生まれ、20年に同志社大学経済学部を卒業すると、日本基督教団・霊南坂教会(東京都港区)のオルガニストになり、83歳までその任を務めました。その間、山田耕筰や、その師でもあるベルリンのカール・レオポルト・ヴォルフに作曲を学び、礼拝用のリード・オルガン曲や賛美歌も数多く作曲しています。
島崎藤村の詩に曲をつけた「椰子(やし)の実」(1936年)は、2007年に「日本の歌百選」に選定され、現在でも広く愛唱されています(薬師丸ひろ子も2013年のアルバム「時の扉」でカバーしました)。また、東洋英和女学院短期大学でも教鞭をとり、同志社や中部大学、大阪女学院などの校歌も作曲しています。
童謡「サッちゃん」「いぬのおまわりさん」などで知られる作曲家の大中恩(おおなか・めぐみ、2018年召天)は息子で、家庭の思い出をこう語っています。
戦争が終わると、実家の近くにある米国大使公邸にマッカーサーが住んでいました。家は、父がオルガニストを務める霊南坂教会のそばで、聖歌隊の人たちが集まるたまり場になっていました。外に漏れる音を頼りに、米兵や米軍関係者が足を運び、ピアノやオルガンに触れたい、賛美歌を歌いたいと門をたたくのです。
つい昨日まで命を捨ててでもと戦った相手ですが、歌が好きな人間ばかり来る。……歌い、心を通わせ、そして食べ物がある。泉のような場所でした。(2015年12月3日、「産経新聞」)